はじめての雪
兎森うさ子
1.
午前中、安野達と家事をし、安野が姫宮のことを気遣って、「今日の家事はここまでにしましょう」と言われ、一段落したことから姫宮は、大河の様子を見に行こうとした時だった。
小口が大河のことを抱っこして、窓の外を見ていた。
そのようなことをするのは初めてではなかっただろうかと思いつつ、二人の元へ行った。
「窓の外に何かあるのですか?」
「あ、姫宮さま。見てくださいよ。雪が降っているのです。雪」
雪?
屈んでいた姫宮は背筋を伸ばして、二人の目線の先を見た時、少し目を見開いた。
雨が降る時とは違うねずみ色の空に、白い粒がふわふわと降っていた。
「雪が降るなんて······珍しいですね」
「ここのところ寒かったですからね。まぁ、わたし外に出てませんけど」
「······私もそんなに······」
洗濯をしようにも安野が、「最近寒いですから、姫宮様は中のことをやってください」と有無を言わさず言われるため、主に料理しかやらせてもらえなかった。
強いていうなら、自分の部屋の窓を開け閉めする時に寒いなと感じる程度だが、ずっと外にいるのとは違うため、雪が降るほど寒いとは思わなかった。
「雪、降ってますね」
「時々みぞれのような時もありますが、この時間から降ってますと、もしかしたら明日、積もるかもしれませんねー」
「そうですか」
小口と話している間もちらっと大河のことを見てみるが、ずっと窓の外を珍しそうに見ていた。
その様子に大河にとっては産まれて初めて見るものだったのかと、その時になって気づいた。
そうだとしたら、少しでも仲良くなれるチャンスなのでは。
そう思った姫宮は、一呼吸して言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます