ニンジャ・キャット 「トモヨ」
オーギガ製薬は表向き、
勿論、それは
遥か下に広がるのは一筋の光も届かぬ不毛の
区画には至るところパイプラインが巡らされ、建物のあちこちには危険物を表すドクロマーク。ここで生産されているのは、バイオ工学が生み出したサリプタンの特・異性体。
簡単にいえば合成麻薬、「
本来ならヤクザが
今、その施設内の巨大倉庫──製造した「
「──なあ。ところでお前、知ってるか?
「あー、知ってる知ってる。アレだろ? ネットに自分が行った犯罪を解説付きでアップするテロリストだろ?」
「そうそう、それそれ! 実は俺、最近その追体験動画にハマってるんだ」
「ええ? 大丈夫か、お前? 相手は頭のイカレた犯罪者だぞ!」
「──いや、俺も、最初はそう思ったんだ。どんなクソ野郎の愉快犯が、そんなクソを世間に公開して喜んでやがるんだろう、って。ところが、見始めたら止まらねえんだわ」
「──お前、ちゃんと
「まあいいから、ちょっと聞けって。ケンリューのスゴイところは、金目当てじゃないってことと、
で、例え何かを盗んだとしても、それを下層階の連中に還元する──
その昔の『ゴエモン・イシカワ』とか、『
「──うわあ。お前、完全に頭ヤラレちゃってるじゃん。自分が好んで集める情報にバイアスが掛かってると意識したことは? あるいは、追体験動画にウイルスが仕掛けられていた可能性は疑ったか? 悪いことは言わねえから、早いうちに
──なかなか、鋭い指摘だね。
ケンリューは彼らの会話を聞きながら、そう思った。
聞いていたのは、自分のファンだと言った軍人のすぐ近く──本当に、数十センチと離れてはいなかった。
ただ指摘の中で間違っているのは、追体験動画に依存させるウイルスは仕込んでいないこと。企業の不正を暴くことで溜飲を下げる人々以外に、警備関係者も
そう踏んでいたケンリューは、彼らの持っている警備上の機密を盗むウイルスを仕掛けた。
そうやって、犯行動画にアクセスする者の中から、次のターゲットを選んでいた訳である。
自分のファンの軍人が、サイボーグの肩を回すついでに背後を見た。
その
──けれども、軍人は気付かない。
幾重にも処理され、補正された視覚映像。
リアルタイムに差し替えられ、作り変えられ、削除される。
なにより、ケンリューがまとっている機械の
例えば自分自身の姿を消し、
単独潜入用・隠密型身体「ケンリュー」。
全盛期の「IGA‐KOUGA Ltd.」によって造られ、本来は猫耳と尻尾は標準装備ではないが、それは彼女の施した
ケンリューこと、トモヨは、見えない目で自分を見つめる軍人に微笑みかけると、「色々、ありがとう」と心に念じた。
音もなく地面を蹴って跳躍し、軽々とゲートを越えて倉庫の敷地に下り立つ。
もしその姿を視認出来たなら、二人はきっとこう言ったに違いない。
「ゴエモン」でもなく、「
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます