ハーレークエスト~争いに満ちた女の子だけの世界に転生した勇者の冒険~
戸隠シノブ
第1話~勇者ハーレーの冒険の終わり~
~魔王の間~
「魔王デスタリスク!今日で貴様も最期だぁッ!ボクたちの正義の力を受けてみろ!!
勇者ハーレーは魔王デスタリスク相手にそう叫ぶと力強く剣を構える。
ハーレー・ムンガルド
この魔王に支配された世界「ハーレクイエム」に光を取り戻す使命を負った伝説の勇者。
絶大な威力の勇者剣術と勇者魔法の使い手であり、歴代勇者の中でもトップクラスの実力を持つ。
とても真面目で心優しい性格であるが、実はかなりのスケベ。
また同じパーティメンバーかつ幼なじみのレムとは相思相愛の仲である。
仲間たちと共に魔王軍と激闘を繰り広げた後、遂にここ魔王城にて、魔王との長きに渡る因縁に終止符を打つため最後の戦いに挑もうとしていた!
「ハーレー!アタシたちの手で、この戦いを終わらせましょう!はぁああああ…ッ!!」
魔法使いの少女レムはそう叫ぶと、己の魔力を極限にまで高め詠唱を開始する。
レム・ハレムリヤ
ハーレーの幼なじみの愛らしい見た目の少女。
幼き頃よりハーレーに恋をしているが、その想いを旅の間もずっと打ち明けることが出来ずにいた。
高レベルな攻撃魔法と補助魔法と回復魔法をすべて使いこなせる天才魔法使いであり、その絶大な魔力で勇者パーティでも大活躍した。
「レムどのの攻撃魔法が発動するまでの間、この私が時間を稼ごう!みんな、先陣を切らせてもらう!!光の加護よ!我を守りたまえ!シャイニング・ホーリーアーマーッ!!ウォオオオオオ突撃~ッ!!!」
聖騎士ジータニアはそう叫ぶと、自身に光の鎧を纏わせると魔王目掛けて突撃する。
ジータニア・オルストク・エルザルト
王家に代々使える聖騎士の女性。
非常に美しい容姿であり、求婚する男性も後をたたないが、みんなもれなく撃沈している。
これは彼女の理想が高いからではなく、彼女が「同性愛者」だからである。
卓越した剣術と優秀な回復魔術と鉄壁の防御魔術を使いこなし、その非常にバランスの取れた戦闘スタイルで、勇者パーティをずっと支えてきた。
「あーッ!ジータさんってば、いくらなんでもちょっと先走り過ぎですよ~。はぁ、相変わらず猪突猛進なんだから~。せめてワタシたちにも防御魔法を…まったく自分だけズルいな~。……さ~てと、このワタシも『かつて無いレベルの本気の拳(こぶし)』ってヤツを、いっちょ魔王さんの体にお見舞いしてやるとしますかぁ!!」
怪力神父オスカーはそう言うと、拳を構え戦闘体勢に入った。
オスカー・ヴァートレン
怪力無双のイケメン暴力神父。
聖職者であるが酒癖と女癖が非常に悪く、世界中に妻と子供がいる。
その圧倒的なパワーから生み出される必殺の一撃は、どんな強敵をも粉砕し、勇者パーティの勝利に大きく貢献した。
「愚かな人間どもめ、いくら束になろうとも魔王である我を滅することは叶わぬぞぉッ!はぁああああああああッ!!!!!」
ジータと激しく撃ち合っていた魔王デスタリスクだったが、突然そう叫ぶと強大な魔力を込めた一撃を彼女に放った!
「うわぁああああああ…ッ!!!!!」
〈ドゴォオオオオオン!!!〉
この強力な一撃の直撃を受けたジータは、物凄い勢いで吹き飛ばされてしまった…が!間一髪のところでオスカーに抱き止められる。
「す、すまない…オスカーどの。油断してしまった……」
「まったくもう~、言わんこっちゃありませんね……あれ?もしかして『またちょっと』太りましたか?」
〈バゴォオオオオオン!〉
オスカーの無防備な顔面目掛けてジータの拳が炸裂した。
「オスカーどのはいつも一言多いぞ!あと女性に対しての配慮も皆無過ぎる!猛省してくれぇ!!」
「……せっかく助けてあげたのに……ひどいよ、グスン…」
鼻血を出しながら彼はそう言うと、ジータを優しく地面に寝かせた。
「ううう…すまないなオスカーどの、少しだけ休ませてくれ、その…ダメージが思いの外、…大きかったみたいだ……」
「……お任せください!さーってと!それではワタシも、カッコイイところを魅せちゃいますかねぇええええ!!!」
そう叫ぶと彼は勢い良く魔王に接近すると凄まじい拳撃を浴びせはじめた!
〈ドガガガガガァッ!!!〉
「グヌゥ…ッ!おのれ!こざかしいマネを……ォッ!!」
「フフ、さぁて魔王さん…さらに『強力なコレ』に……耐えられますかァ!!?悪罪救滅(あくざいきゅうめつ)☆カタストロフアッパァーッ!!!!!」
〈ドッゴォオオオオオン!!!!!〉
凄まじい爆音と共に魔王の体は宙に舞い上がる!!
「ぬ、ヌオォオオオオオオオオオオ!!な、なんと言うパワーだぁッ!!」
宙に舞い上がり自由に身動きが取れない状態の魔王デスタリスクに、さらにハーレーが追い討ちを仕掛ける!
「はぁああああ…ッ!くらえ!ハーレー・スマッシュ!!」
〈ズバァアアアン!〉
ハーレーの鋭い剣撃が魔王に炸裂する!
そして魔王の体はそのまま地面に激しく激突した!!
「オオオオオオオオオオ……ッ!おのれぇええええええええええええッ!!!!!!貴様ら必ず皆殺しにしてやるぞぉおおおオオオオオオオオオッ!!!!!!!」
魔王の恐ろしい唸り声が辺りに響き渡る…。その直後魔王の体はおぞましい怪物の姿へと変わっていく!!
「……遂に本性を現したか魔王!!」
「準備オッケイ!みんなぁああああああ…ッ!下がってぇ!あんなヤツは、アタシのこの必殺最強魔法でブッ飛ばしてやるわ!!」
レムのこの言葉を聞き、ハーレーとオスカーは直ぐ様その場から離脱する。
「いっけぇえええええええええッ!アークインパルス・スターノヴァ・イグニショォオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!」
魔王に超強大な魔力による一撃が炸裂する!!
〈ズガァアアアアアアン!!!!!〉
「ひゅー、相変わらず凄まじい威力の魔法ですね…。さて……コレの直撃を受けては、さすがの魔王さんもタダではすまないはず……」
「や、やったかぁ!?」
すると突然爆煙の中から禍々しい黒い光線がハーレーたち目掛けて放たれた!
「き、きゃあぁああああああ…ッ!!」
「ううう…ッ!?速い!直撃する……」
とっさにハーレーはレムの前に立つと、彼女を必死に守ろうとする。
「……あー、コレは……死にましたかねワタシたち…?……南無三」
すると窮地の三人の前にひとりの女性が立つ!
そして勢いよく地面に剣を突き刺した!!
「諦めるにはまだ早いぞみんな!…今こそ『私の最大の防御魔法』をご披露しよう!!」
「…ジータさん!!」
「大いなる神々よ…悪しき力から我らを守りたまえぇえええ!!シャイニング・ディバインフォースシールドォオオオオオッ!!!」
ジータがそう叫ぶと周囲に光輝く巨大な防壁が形成される!
〈ズガァアアアアアン!!!!!〉
凄まじい爆音と共に形成された光の防壁が一瞬で消滅する。
間一髪のところで三人は、ジータの防御魔法により救われたのであった。
「はぁはぁはぁあああ…ッ!ううう、なんとか間に合ったみたい、…だな……ぐぅッ」
そう言うとジータはその場に崩れ落ちる。
「ジータさぁんっ!大丈夫ですか!?」
「ジータさん!!」
三人は急いでジータの元に駆け寄る。
「す、すまない…みんな。私は今度こそ、もう動けそうにない……あとは、……あとは頼んだぞ…。この世界に、この世界に光を!!………」
そう叫ぶと彼女は静かに目を閉じた。
「いやぁああああジータさぁぁああん!!!!!」
レムは大声でその場に泣き崩れた。しかしそんな彼女に対して、オスカーは優しく語りかける。
「ご安心くださいレムさん…ジータさんは気を失っただけのようですよ……」
「ううう、よかった…本当によかったよぉおおお…うわぁああああん!!」
「さてと…そろそろ決着つけるとしますかね……、ハーレーさん、いけますか?」
「はい!オスカーさん、全力で参りましょう!!…レム、君はここでジータさんを守ってあげて!ボクとオスカーさんで、ヤツにトドメを刺す!!」
「ハーレー、……死んじゃ嫌だからね!アタシまだ、…『まだアナタに伝えてないことが、アナタに絶対に伝えなくちゃいけない大切なことが』あるから……だから、だからお願い!あんなヤツに、絶対に負けないでぇ……ッ!!」
「ああ…、行ってくるよレム!!」
(レム…、実はね、…「ボクも君に伝えたい大切なことがあるんだ」…、だから…だからね、…それを伝えるまでは、ボクは決して死ぬワケにはいかないのさぁ!)
そしてハーレーとオスカーは最後の攻撃を開始した。
『はぁああああああああああ…ッ!!!!!』
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッン!!!!!!!!!滅ぼす滅ぼす滅ぼす滅ぼす…ッ!ホロ、…ホロホロホロボ…ホロボボボボボ……ッ!!!!!」
怒りで理性を完全に失った魔王デスタリスクは、体から強大な魔力を放出しながら、辺りに先程放った黒い光線を撒き散らす!
ハーレーとオスカーはこれを避けながら魔王と徐々に距離を詰めていく。
「体が軽い…身体能力が向上しているのか!…そうか、ジータさんのさっきの防御魔法の力かぁ……!!」
「……『それだけでは無い』みたいですよ…ほら、ちょっと魔王相手に背を向けるのは危険ですが、後ろご覧ください」
オスカーに言われるがままハーレーは、後ろをそっと振り返るとそこには…そこには目から大粒の涙を流しながらも、懸命に補助魔法を唱えるレムの姿があった。
「…レム…ッ!…ありがとう!力が…力がドンドン湧いて来るよ…ッ!!」
「ハーレーさん、…ヤツに思い知らせてやりましょう!『真なる正義の力を…真なる愛の力を』……ッ!!!!!!!」
「壊す壊す壊す、コワコワコワコワ……ススススス…コワ……イ」
『うおぉおおおオオオオオッ!!!!!』
ハーレーとオスカーは、強大な魔王を相手に一歩も引くことなく、次々と息の合った連撃を繰り出していく。
そして…一歩、また一歩と、徐々にデスタリスクは追い詰められはじめる。
「さぁぁああてッ!『超特大のヤツ』をいきますかねぇえええッ!!救済愛砕大喝采(きゅうさいあいさいだいかっさい)☆ハルマゲドンビッグバンパーーーンチ……ッ!!!!!!」
(ドッカーーーーーーーーン!!!!!)
オスカーの拳からの究極の一撃が、魔王の強靭な肉体を貫き、なんと腹に大きな風穴を開けた!そして……
「うおおおぁああああああ!魔王デスタリスク、これで……終わりだぁああああああアアアアアアッ!!!!!!!!」
「無駄無駄無駄ムダムだダ…セカせカイ…世界ハ滅びル…ケッしてサケら…レ…ホロホロホロ…コワコワスコワコワコワイ…グオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!」
追い詰められた魔王は、口から今まで以上に強大で禍々しい黒い光線をハーレー目掛けて放った!!…がしかし、ハーレーはコレを瞬時に避けると、大きく剣を振り上げ高く跳躍する!!
「ううう…、勝ってくれよハーレーどの、『どんな時でも君は決してひとりではない』なぜなら…仲間が、私たちがいつもそばにいるからだ…だから頼む………勝利を信じて!!」
「ハーレーさん……今こそ…、闇を払い世界に光を!!」
「お願いハーレー負けないで………いっけぇぇええええええええええええハーレーーーーーーーッ!!!!!!!!!!」
「みんなの声援が、平和を願う人々の思いが…ボクに無限の力をくれるんだぁぁああああ!!くらえ!一憤打砕流勇重封断剣(いっぷたさいりゅうゆうじゅうふだんけん)究極奥義…ッ!!ファイナルアトミックハーレーーーーーーーッ!!!!!!!!」
〈ズバァアアアアアアン!!!!!!〉
ハーレーの渾身の一撃が魔王に炸裂し、ハーレーとその仲間たちが、誰もが『完全勝利』を確信した瞬間であった…!
「ウウウ…ウゴゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!」
突然魔王の体から禍々しい黒い触手のような物が跳び出し、それは容赦なく次々とハーレーの体を貫いていった!
〈ザシュッ!ザシュッ!グサァッ!〉
「……!?…ごふぅ!……あ、あれ……ぇ?」
あまりの一瞬の出来事に、ハーレーは自分の身に起こったことを理解するのに、少し時間がかかった…。
そして…それを理解すると、彼はその場に力なく倒れるのだった……。
「ウンメイ……シュクメイ……メメめメイ、くリカエ……ナニモ…か……あアア、マモりたカッタ……」
謎の言葉と共に魔王の体は崩壊を始め、そして跡形も無く消滅した。
(意識が…意識がどんどん薄れて…あれ、みんな…みんなは無事なの……?)
「ハーレーさん…っ!ぐぅ…残念ですが、……この深い傷ではもう……」
「何を…何を言っているんだぁッ!オスカーどの!諦めるな!まだ、まだ間に合うはずだぁ!レムどの!さぁふたりで、ありったけの回復魔法を…っ!!」
ジータとレムは上級回復魔法で必死に彼の傷を塞ごうとするが、彼の傷はまったく塞がることはなかった。
それどころか傷はますます大きく広がってしまった。
そしてその傷口からは、今もおびただしい量の血が溢れ出る…。……最早手遅れであった。
「ハーレー…ハーレー……いや、いやだ、イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ…死んじゃ嫌だよぉおおおオオオオオオ……ハーレーーーッ!!!!!!」
崩壊をはじめた魔王城内にレムの悲痛の叫び声がこだまする。
「『愛してるの』…、アタシね、アナタのことを愛しているのハーレー…!ずっと伝えたかったこと、今やっと伝えられた…、……ねえハーレー……アナタの、アナタの気持ちも教えてよ……お願いハーレー…」
レムは目に大粒の涙を浮かべながら、瀕死のハーレーにそう問いかける。
(……ああ、そうか……、ボクは死ぬのか……でもみんなが無事でよかったよ、…レム、…ごめんね、君を悲しませてしまって………!…そうだ、伝えないとボクも、……死ぬ前に伝えないと……ボクは…「ボクも」君のことが……)
「レ…ム………ボクも…君を愛し…………………」
レムは事切れる寸前のハーレーの両手を強く握ると、無理に笑顔を作りながら優しく彼を見送ることにした。
「ハーレー…………おやすみなさい」
彼女の声はとても震えており、今にも「激しく押し寄せて来る悲しみの感情」を爆発させてしまいそうであった…。
(あー、こんな時になってボクって最低だな…、レム…死ぬ前に一度でもいいから、君とエッチなことがしてみたかったな……身も心も結ばれたかったな……おやすみ…レム……………)
勇者ハーレー・ムンガルドは、魔王デスタリスクとの死闘の末、大切な仲間たち…そして愛する人に看取られながら、平和になった世界と引き換えに、その命を散らすこととなったのである…。(つづく)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます