自作「転生帰録(鵺)シリーズ」を振り返り解説し反省する

城山リツ

☆超ネタバレ☆「転生帰録──鵺が啼く空は虚ろ」あらすじ

【ご注意!】

以下に紹介する内容は鵺シリーズ一部「転生帰録──鵺が啼く空は虚ろ」の内容をほぼ網羅するネタバレです!

 素早く内容を掴んでおきたい方は是非ご利用ください。



 第一章 不思議な少女との出会い


 高校一年生のただ蕾生らいおは幼馴染の周防すおうはるかに誘われてある研究所の見学会に参加した。オカルトマニアの永はUMAが大好きで、そこは、想像上の生物だとされていたツチノコを新生物として発見、登録した銀騎しらき詮充郎せんじゅうろう博士が建てた研究所であった。

 見学会では、所長の銀騎詮充郎はVTRの出演のみ。代わりに副所長で孫の銀騎しらき皓矢こうやが講義していた。ツチノコが発見された時の講話などを聞き、施設を見学した後、研修所の食堂で昼食が振舞われる。

 永は食堂を抜け出して施設内を散策し始めた。戸惑いながらついていく蕾生は研究所の異様な雰囲気を目の当たりにする。しばらく歩くと奥に温室のような建物があった。しかしそこに行くには大きなプランターが邪魔している。永はそれを蕾生に動かすように頼む。実は蕾生には常人以上の怪力があり、家族と永以外には秘密の力だった。最初は躊躇った蕾生だったが、永の真剣な眼差しに負けて道を開く。

 温室に入ると、中には一人の少女がいた。蕾生達より年少で黒い髪に黒い瞳の美しい少女である。永は少女を「リン」と呼んだ。少女は永を「ハル様」と呼び、二人は知り合いのようだった。少女に会えて喜び表す永だったが、少女の方は冷たい目で二人を拒絶する。非常ベルまで鳴らされたので、蕾生は混乱しながら永を抱えてその場から逃げ出した。


 見学会を終え研究所を出たところで、蕾生は永から自分達の運命を聞かされる。

 永と蕾生はぬえという怪物に呪われて転生をこれまでに33回繰り返してきたと言う。蕾生にはその記憶はなかった。だが、永は違う。永はおよそ900年前の武将、はなぶさ治親はるちかの生まれ変わりで、これまでの記憶がある。蕾生は英治親の郎党、雷郷らいごうの生まれ変わりで、温室で会った少女は同じく郎党のリンの生まれ変わりだと言う。何故蕾生だけが記憶を持たないのかは、鵺から受けた呪いが雷郷が一番濃いからだと永は考えているが、それ以上の情報を教えてはくれなかった。これまでに33回失敗している永の方針に従うことにした蕾生は、ほとんど知識もないまま自分達の呪われた運命と戦う決意をする。


 第二章 孫娘登場


 まずはどうしてリンが銀騎研究所にいたのかを探りたい永は、同じ学校に銀騎詮充郎の孫娘、銀騎しらき星弥せいやに目をつけた。どうにか彼女と友達になってもう一度研究所に入れてもらおうと言う。星弥は一年生の中でも目立つ存在で、天然で八方美人なところがある。永は銀騎詮充郎博士のファンだと言って接触を試みた。だがあまり祖父といい関係にないのか星弥は乗ってこない。しかし、UMA研究のことや兄の皓矢に対するリスペクトなどを述べると、星弥は心を開き蕾生と永を自宅に招く。預かっている親戚の子どもに銀騎詮充郎の研究を教えてあげて欲しいと言う。正直その子どもの存在は面倒くさいが、それで自宅に招かれたので仕方ないとし、二人は週末銀騎家に向かった。


 銀騎家で星弥から紹介された親戚の子どもに遭遇した永と蕾生は驚いた。研究所の温室で会ったリンだったのだ。リンは御堂みどう鈴心すずねと名乗った。だが永の説得もむなしく鈴心は協力を拒否する。このまま何もしなければいつもより長く生きられるかもしれない、と言う鈴心の言葉に永は打ちのめされる。蕾生は鈴心の身勝手さに激怒するが、それでも鈴心は引かなかった。

 星弥は三人の関係を不審に思い説明を求める。星弥を取り込めば鈴心もなびくかもしれないと考えた永は全てを打ち明けた。三人の運命を知った星弥は鈴心が無理をしているのではないかとして、協力することを承知した。ここから星弥を加えた三人は鈴心の心奪還を計画していく。


 第三章 銀騎の秘密


 とりあえず毎週末銀騎家に来ることを許された永と蕾生は、星弥と情報の擦り合わせを試みる。実は銀騎家には裏の顔があった。古くからの陰陽師の家系だったのだ。当然永はそれを知っており、過去に何度も銀騎と揉めたことを蕾生に話す。特に前回の転生で、銀騎詮充郎がリンに異常な興味を抱いていたことが引っかかっており、詮充郎が何らかの方法でリンを身内に転生させたのではないかと永は考えていた。

 星弥によれば、陰陽師の跡取りは兄の皓矢であり、自分は何の力もないから何も知らされていないと言う。銀騎詮充郎にも陰陽師の力はなく、現在の銀騎家では皓矢がその責を背負っているようだ。銀騎の分家の御堂に生まれた鈴心には力があるかと聞くと、星弥は途端に顔を曇らせた。鈴心は幼い頃から詮充郎に軟禁されているような生活をしており、定期的に身体検査をされているらしい。詮充郎から何らかの人体実験をされているかも知れないと考えた永は、怒りとともに何としても鈴心を奪還することを心に誓う。


 また次の週末、銀騎家にやってきた永と蕾生は星弥の携帯電話を使って、部屋から出てこない鈴心に無理矢理三人の会話を送信するという手法を試みた。鵺の呪いについて話し合っていると、鈴心が血相を変えてやってくる。鈴心が持っている携帯電話は皓矢や詮充郎から監視されていると言う。散々鵺について語っていた内容が筒抜けだったかもしれないと、途端に緊張する永と蕾生だったが、その場では何も起きなかった。

 だがその様子を冷ややかに見ていた者がいる。星弥だった。鈴心の携帯は兄の皓矢からプレゼントされたものであり、そこに他意はないと信じている星弥は、兄のことすらも信用していないのかと鈴心に詰め寄った。詮充郎の言いなりでいる皓矢に対する不信感を素直に吐露する鈴心と、それに衝撃を受ける星弥。そんな鈴心の態度は星弥に甘えていると叱責する蕾生。自分勝手な判断で星弥を蔑ろにし、永に背を向ける鈴心を遠慮なく叱れるのは対等な蕾生だけだった。星弥に謝罪した鈴心は永とも向き直り、今回の転生も永に従い協力すると誓う。これでやっと三人はスタート地点に立った。


 第四章 コレタマ部


 鈴心を迎え入れた永と蕾生と星弥は、詮充郎と皓矢から監視されない場所が必要だとし、三人だけの部活を作る。問題はそこにどうやって鈴心を呼ぶかであった。

 だが、その問題は鈴心が三人と同じ高校に編入してくることで突然解決する。星弥が言うには急な詮充郎からの命令であった。真意がわからずに困惑する永は何かの罠かもしれないとして気を引き締める。しかし鈴心がいつでも連絡が取れるようになったのは喜ばしいことであった。

 これを機に、永は銀騎研究所にあるであろう萱獅子刀かんじしとうという刀を探す計画を立てる。萱獅子刀とはかつて英治親が鵺を討伐した褒美に帝から賜った宝刀である。それがあれば鵺を倒せる確率が上がるのだ。前回の転生で銀騎に奪われた萱獅子刀について永は星弥と鈴心に尋ねるが、二人とも知らないと言う。

 研究所内にある倉庫が怪しいとみた永はそこに侵入する計画を立てる。皓矢が留守にする日を選んで決行することにした。


 第五章 真実


 次の日曜日、目当ての倉庫に侵入した永、蕾生、鈴心、星弥の四人は多数の部屋を手分けして探っていた。蕾生が入った部屋には獣の彫刻が施された石壁があり、永がそれを調べようとすると、突然石壁が崩れライオンのような猛獣が現れた。蕾生はその怪力でその獣を一撃で倒す。よく見てみると、それはライオンとヒョウの混合種に似ていたが、その尾は蛇だった。できそこないの鵺のようなそれに目を奪われていると、別の方向から黒い犬のような獣に襲われかける。間一髪で皓矢が現れ、式神の青い鳥を使って獣は撃退された。タイミングよく現れた皓矢は実は星弥の仕込みだったことに気づいた永は憤慨するも、詮充郎との会談を承知した。


 皓矢の陰陽術により隠されていた詮充郎の研究室に行くと、秘書と詮充郎が待ち構えていた。前回の転生での確執から詮充郎に悪態をつく永。しかし詮充郎の方はまた会えたことを喜んでいた。詮充郎は蕾生と永の生体データを欲しがっていた。当然拒否して帰ろうとする永達を皓矢の陰陽術が阻む。蕾生を「ケモノの王」と呼ぶ詮充郎は自らのコレクションである鵺の遺骸2体を披露した。それらに不思議な感覚を覚える蕾生。詮充郎が見せたのはかつてライだったもの、すなわち蕾生の前世が鵺に変化したものだった。蕾生だけが転生の記憶がないのは、自身が鵺になってしまうほど濃い呪いを受けたからであった。

 かつての記録では、鵺化の運命を知った途端に鵺化した事例があったため、皓矢は蕾生の鵺化に備えて臨戦体制をとる。自分の運命を知ってしまった蕾生は狼狽し、とどめようとする永と鈴心の声も聞こえないほどだった。だが、全てを知った星弥がそれでも蕾生を信じ、「唯くんは強いから大丈夫だよね……?」という言葉に導かれ蕾生は鵺化をとどまった。


 一度銀騎家を出た蕾生は永と鈴心から最初の生で何があったのかを聞く。鵺の返り血を沢山浴びた雷郷が鵺になり、英治親とリンを殺していた事実に蕾生は打ちのめされる。だが永と鈴心からの労りの言葉で自分の運命を受け入れた蕾生は改めて呪いに立ち向かう決意をする。

 その後、星弥と鈴心は三日間学校を休んだ。日曜日の件で気まずくなっているのだろうと思っていた二人の前に突然鈴心が現れた。星弥を助けて欲しい、あの子は私の妹なんです──と言う鈴心の言葉に永も蕾生も驚愕した。


 第六章 詮充郎と対決


 鈴心と星弥は実は詮充郎の実験によって作り出されたデザインベビーだった。鵺由来のキクレー因子が星弥の中で暴走状態になり、意識不明に陥っているのだ。鈴心は銀騎の身内に生まれてしまったために、星弥に感情移入し過ぎるところがあり、それを永は不安視していた。案の定星弥のことに懸命になる鈴心に冷たい言葉を放つ永。だが蕾生の叱責により星弥を助ける決意をする。

 蕾生、永、鈴心の中にもあるキクレー因子を使って皓矢が星弥の治療を試みたが不発に終わる。仕方なく詮充郎の元を訪れることになった。だが、星弥の状態を見た詮充郎はこのまま星弥を鵺に変化させると言う。懸命に抗う皓矢の訴えも虚しく、萱獅子刀を使って星弥を鵺化させようとする詮充郎の姿に蕾生の怒りが爆発した。

 蕾生の体は黒雲に覆われ、ついに鵺の姿が顕現する。絶望する永と鈴心。皓矢は陰陽術で鵺を生け取りにしようと立ち向かう。そんな中星弥が目を覚ました。鵺化した蕾生を見た星弥は、蕾生が泣いていると訴える。その純粋な心が届いたのか、鵺は研究室にあった2体の遺骸を破壊した後、何かを吐き出してからまた変化を遂げる。そこには黄金にきらめく鵺が立っていた。


 黄金色の鵺は蕾生の自我があるようで、詮充郎と皓矢を圧倒する。皓矢は引き時を察し、詮充郎に降参することを進言。萱獅子刀を使って蕾生を人間の姿に戻した。それに激怒する詮充郎は、自身の生い立ちにおける劣等感と鵺に対する執着心を吐露する。その無念の涙に一同が聞き入っていると、突然詮充郎は何者かからの攻撃によりその身体を貫かれた。その張本人は秘書の佐藤斗羽理とばりだった。得体の知れない術を使い、その場から逃亡した佐藤を追うこともできずに詮充郎の治療に皓矢達は翻弄されていた。


 エピローグ


 詮充郎は一命を取り留めた。だがまだ多くの謎が残っており永達は消化不良な思いだった。今後は皓矢と星弥が呪いを解く手伝いをしてくれることになって、一度帰ろうとした時見知らぬ青年が現れる。

 彼は雨都うと梢賢しょうけんと名乗った。昔から永達を支援してくれている一族の末裔だった。梢賢は永達に助けを求める。雨都が持っている鵺の情報を手に入れることと、梢賢の抱えた問題を解決するために、永、蕾生、鈴心は彼の故郷に向かう決意を固めたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る