エピローグ

「やあ、有矢くん」

「どっから出てきたんだよ。なんでここに」


 気分よく帰ろうとしていたところに、胡乱なおっさんが現れた。


「君に言われたくはないだろ。——まあいい。本題二つ、連絡ひとつ」

「じゃあ、本題から」

「吸血鬼の本質は魂食いだ。あれらは血を吸うが、実際に動力源としているのは血と共に吸い出している魂だ。当然、魂は放っておいて回復するものじゃない」


 じゃあ、宗二死ぬじゃん。

 しかし、そこの代案についてはすでに考えてある。

 黒色を作り出し、人間を作る。

 現れた人間は糸の切れたようにその場に倒れた。


「あれ……?」

「魂が入ってない。魂が身体に宿る過程はまだまだ不明瞭だ。魔法でも難しい」


 なら、まず母体を作り出し、そこからコマ送りのように次々と時間を進め、一人の人間の出来上がり。


「どうだ……」

「確かに、力技だが、これなら魂も宿る」


 倫理的にはどうかと思うが、その辺の人間を食料にさせるよりはよっぽど倫理的だろう。


「なら、報告二つ目。君の力についてだ。理論は完成した。準備もできている。すぐにでも取り掛かれる」

「じゃあ、今夜」


 六花さんに不便をかけ続けるわけにはいかない。出来るなら一分一秒でも早いほうがいい。


「あとは、連絡。那古野から、仕事は無事成功しました。だそうだ」

「了解です」


 連絡を済ませると、出てきた時と同じように九条さんはすっと消えていた。


 家についたのは夕方ごろ、六花さんが帰って来たのはすっかり日が暮れたころ。


「今日はカレーです」


 皿に盛りつけたカレーは何の変哲もないものに見える。

 席に座り、手を合わせてからスプーンを手に取る。


「おいしい……」


 今日はちょっと濃い目の味付けです。


「え、あ、——このお肉さ……」


 何でもない会話をするように六花さんが話す。


「有矢の肉?」


 正解だけど、とてもそうとは言えなかった。

 六花さんはおもむろに席を立つと、窓を開けてベランダへと出る。


「こんばんは」

「——ごきげんよう」


 九条さんと仲良く挨拶を交わして、窓を再び閉める。今度は鍵もかけた。

 そして、六花さんは無表情でこちらへと迫ってくる。


「あ、ごめん――」

「別に、怒ってないけど」


 左手を掴まれる。重機に踏みつぶされるような感覚、俺じゃなければ骨が粉に分解されている。

 左手が六花さんの方へと近づけられる。


「私、そんなに弱くないから」


 肉に歯が食い込む。痛みを知覚する前に、俺の肉は容易く引きちぎられた。

 まあ、多少のハプニングはあったが、これで万事解決ってことで、ようやく平和な日常に戻れそうだ。

 

 

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