[1000pv達成!]隣の部屋の怪しいお姉さんは異世界帰りの元勇者で売れっ子作家らしいので作家人生キャリーしてもらう
エルザ
第1話 隣人は元勇者の売れっ子作家
午前4時、薄暗い部屋でマウスとキーボードのカチカチとした音だけが響く。
「俺の神エイムを食らえモブども!道を開けろ!」
「あっ!ちょっ!まて、それずるだろ!!」
defeatの文字が画面を覆いつくしたのを確認してヘッドホンを乱暴に外すと、さっきまでは聞こえなかったエアコンの音、パソコンが唸る音、その二つより大きくVtuberの配信の音が耳に流れ込んでくる。
俺の名前は九重龍(ここのえりゅう)。21歳の売れないラノベ作家だ。
小さいころからなんでも平均以上にはこなせたが、何かで一番になったことはない典型的な器用貧乏。
御覧の通り虚無な生活を送っていて執筆をほとんどしていない、高校生頃の趣味で小説を書いていた時が俺のピークだった。書籍化して自分には才能があると過信していた、世の中上には上がいるということを凡人たちに教えてやるつもりだったが見事に分からされてしまった。モチベーションの低下からゲームをして叫ぶくらいしかすることがなくなった。
普通のアパートなら騒音トラブルになるであろう爆音も住人が俺しかいないこのそこそこボロアパートではなんの問題もない。
「立地もそこまで悪くないのになんで他に人が住まないのかマジで謎なんだよな~、まぁ21歳の売れないラノベ作家が住んでるアパートなんて嫌か」
誰も聞いてない、する必要のない自虐をして心に傷が付く。虚しさを埋めるようにほとんど通知の来ないスマホを眺める。
「不倫ねぇ…奥さん大事にしてやれよまったく、こいつは脱税か~国民の義務を守れよな~」
日課のネットサーフィンをしていると世の中では色々なことが起こっているのが分かる、しかしそのどれもが俺とは全く関係のない話ばかりで違う世界、異世界での話のように思う。その度に社会というネットワークに接続できていないことを自覚する。
親から仕送りを貰う条件で大学に進学したはいいものの、作家活動がうまくいかないことを言い訳にして単位をギリギリ取れるかどうかの生活だ。貯金と仕送りと僅かな印税収入でなんとか生きているがとてもまともとは言えない。
現状を確認するとメンタルがマイナスに振り切れてしまう、気分転換に酒とタバコを持ってベランダに出た。
「うお、思ってたより眩しいな…」
日差しを浴びると心が洗われる、幸せホルモンってやつなのかもしれない。山や丘の先にある遠くの太陽を眺めながらタバコと酒を堪能していたら誰も住んでいないはずの隣の部屋の窓が開いた。
――ガラララ――
「は??」
このアパートには俺以外住人はいないはず、引っ越してきたのなら物音で分かるはず。
思考がまとまらずに開いた窓を凝視することしかできない。
「ふあああ…よろしく、お隣さん」
長くて綺麗な黒髪をなびかせた女が出てきた、腰が抜けて尻もちをつきながらなんとか言葉を紡ぐ。
「あんた誰…」
その女性はタバコに火を付けてから返事をした。
「新山千(にいやません)、元勇者の売れっ子作家だよ」
あとがき
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