新米ダンジョンマスターとして召喚されたので、好き勝手にダンジョン作る

@tjm8874

第1章 ヨータ君、異世界に転移し、ゆるりとダンマス業を開始する

第1話「おきてー。おーきーてよーっ」

「おきてー。おーきーてよーっ」


 うーん、女の子に起こされてるみたいだけど誰だろう……?

 ぼんやりしながら目を開けると、住み慣れたワンルームの自分の部屋なんだが、窓の外が市街地じゃなくて草原と森になってるし。


「やっとおきた? おまえー、美味しいお菓子出せる?」


 声のほうに顔を向けると、ベッドの枕元に人形サイズの妖精さんが座り込んでいる。なぜ妖精さんかというと、半透明な羽が生えてキラキラしているからだ。


「え、妖精さんですか?」


「そうだよー、ミーナだよ! ダンジョンの妖精やってるの!」


「俺は……洋太、あれ、苗字が思い出せないんだけど」


「ヨータね? あのねえ、ダンジョンマスターで召喚されると余計な思い出はふういんされちゃうんだって、神様言ってた」


 召喚されましたか。そして記憶は封印ですか。思い出せるのは、たしか自分は産業系メーカーの社内プログラマーで特にブラックでも無かったこと、なろう系小説は好きでございますということ、ほとんど孤独で、召喚されちゃっても特に問題はないんだろうな、くらいだな。

 どんな学生だったとか家族や恋人は、同僚の顔や名前は、とか何も思い出せない。趣味は車で山に行って天体写真撮影です。これは思い出せた。なんてボッチな趣味なんだ。


「とりあえずねー、『ダンジョン管理・ポイント使用・お菓子生成』って言ってみて。頭の中で考えるのでもいいよ」


「いきなりですか。もう少しこう、説明とか欲しいんだけどな。『ダンジョン管理・ポイント使用・お菓子生成』!」


 と言われたとおりに詠唱してみると、『ダンジョン管理』と言ったとたんに脳内にぺろっとプルダウンメニューが現れて、『作成』『変更』『削除』『奉納』…などのリストが表示された。IDEでクラス名の後にドットを打つとずらずら出てくるやつだ。


 続けて『ポイント使用・お菓子生成』と言うと、お菓子のイメージを要求された。ファミマのミルクセーキプリンを思い浮かべると、掛け布団の上にプリンが二つ落ちてきた。スプーンも付属である。俺の脳内にはお菓子生成メソッドがインストールされてるのか。


「なんか白いスライムみたいなお菓子出てきた! この透明なのは皮なの? 剥いて中身食べるのね? まえのマスターはねー、魔大陸にいたドラゴニアンのおっさんなんだけど、はちみつパンとはちみつクッキーばっかりだったの。お菓子食べながらなら説明とかしてもいいし、とりあえず起きて机のとこ行けば? しかしちっちゃい部屋だなー」


 説明してほしいことは山ほどある。しかしベッドから出て椅子に座っても、ミーナはプリンに夢中で相手をしてくれないようだ。仕方ないので自分もプリンを食べながら部屋を見回してみた。

 ベッドの下の物入れ、机と本棚、クローゼット、ユニットバスと台所。マンションの5階東南角のワンルームだったんだが、南の窓を開けると小さいベランダに洗濯機と室外機があって、その先は草原と森が見える。東の窓を開けてもやっぱり草原と点在する林だった。

 部屋ごと異世界転移ってやつだろうか?


「なにこれおいしかったーすごい! ヨータは天才ダンジョンマスターです!」


「ありがとね。評価が早いな。ミーナさん、いろいろ聞きたいことはあるんだけど」


「なんでも聞いていいよー、ミーナのおしごとはダンジョンマスターのお手伝いだからね、神様のお願いを聞いてマスターを働かせて、ミーナはお菓子もらうの」


 それはお手伝いしているのか?という疑問は置いておいて色々尋ねてみたところ、話があっちこっち飛ぶ中でも、なんとなくやることは分かってきた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 人々がダンジョンで活動して魔力や体力を消費する、ダンジョン内に居ることでその分の寿命を消費する、これはすなわち迷宮神への祈りであり、神の力を満たす行いである。


 ダンジョンマスターはダンジョンの管理調整を行うことで、この神力をより多く集めるように努めるべし。集まった神力の一部がダンジョンポイントとしてキックバックされ、ダンジョンマスターへの報酬となる。


 広く浅い層で多くの弱い魔物、狭く深い層では強力な冒険者向けに少数の強い魔物を揃えることで、より多くの冒険者をダンジョンに潜らせ活動させるべし。飴と鞭作戦で、潜れば素材と宝が得られ、潜らないとスタンピードが起きるように調整すべし。

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「なるほど、完全に理解した。つまりぜんぜん分からないことだらけだわ。ところでミーナさんはどのくらい長くダンジョン妖精やってるの?」


「ミーナで呼び捨てでいいし。妖精に何週間とかより前のこと聞いても、そんなの覚えてないんですけどー」


 3歩歩くと忘れちゃう鳥さんかな?


「前のマスターはどうしていなくなっちゃったの?」


「ワシも500年ほど働いたが、そろそろ迷宮神様の御許みもとへ参る時が来たようじゃ…って言って、コアに吸い込まれて消えちゃった。寿命ってやつ? ミーナには無いからよくわかんないけど。それで新しいマスター出して、って神様にお願いしたら、ヨータが来たのね」


「そっかー、ミーナには寿命がないんだ。それじゃ全部覚えてたら大変だから、何週間分で忘れちゃうのが正しいな。それで、迷宮のコアってどんなの?」


「コアはあれ、上で光ってるやつ。ヨータの部屋の照明に偽装してるのね。壊されると直すのに神力がたくさん必要だから照明に偽装してるんだって。バックアップ?ってやつであっちこっちに何個かあるの。迷宮の一番奥においてあるコアっぽいのは壊されたり持って帰られてもいい偽物で、触って願いを言ってもらうだけの光る球なんだって」


 コアは迷宮の中にむき出しで存在しないと迷宮の管理が出来ない、壁や箱の中に隠すわけにはいかないようだ。思わせぶりに最奥に存在するやつは実はダミーの端末ということか。


「あのね、神様には『めんどくさくないマスターでおねがいね』って頼んだわけ。チートがどうだー、コメしょうゆ味噌ー、元の世界に戻せー、養えー!とかめんどくさいこというやつ多いって聞くし。ヨータはミーナの話だまって素直に聞くし、お菓子美味しいし、大当たりだと思いました」


 確かに自分、そういうところありますね… 異世界でダンジョンマスター?!とか、あっそうスか、まあなんとかなるっすかと軽く受け入れてしまう。そういうところだよ。


 その後は『飲み物生成』で飲み物出してー、とか、ヨータの食べ物は『食事生成』で出せるよ、部屋のものは神力でずっと使えるようになってる、などと話を続けたが、もう眠いから寝る!というミーナの仰せで寝ることになった。


 ベッドに潜り込んでダンジョン管理、と念じてメニューを調べてみたら、一番下に『ヘルプ』で詳しい説明が付いてたよ。これ、妖精さん要らなかったのでは?

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