短きことは良いことだ・2

矢魂

ステルス値上げ

「おいおい。また値上げかよ」


 新聞に書かれた、各社値上げの報に私は溜め息を吐いた。

 食品から生活雑貨に至るまで、ここ最近では毎月のように価格が上昇している。


「ホントにやぁねぇ……。それに、値段が変わらなくても『ステルス値上げ』なんてのもあるって、お隣の奥さんが言ってたわよ?」


 私の正面に座る妻は、そう言って私以上に大きな溜め息を吐く。


「ステルス値上げ?」

「ええ。値段は据え置きでも、内容量をいつの間にか減らしちゃうんですって」

「……つまりは、ああいうことか」


 私の視線の先。テレビに映る映像がちょうどコマーシャルへと切り替わった。


『みんな大好き、スマイリーバーガー!今なら特大のスマイルが0円!』


 カメラ目線でそう言い放ったハンバーガー屋のスタッフ達は全員、見事なまでの薄ら笑いを浮かべていた。

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