第二十七話 新妻、古志加、其の一
午後。
「
気軽な声であらわれたのは、
「可須美さま、ご機嫌麗しゅう。」
耳に紅珊瑚の耳飾りを光らせ、綺麗な礼の姿勢をとる。
所作は女性らしいが、とにかく背が高い。肩幅も広い。
美しく化粧し、髪も高く結い上げ、椿の花を飾っている、美しい女だ。
彼女は、可須美が
今では衛士をやめて、大川の従者、三虎の妻になった。
「また遊びに来たのね。可須美さま、迷惑でしょうか?」
「いいえ。古志加が遊びに来てくれるのは、歓迎よ。」
可須美は、日佐留売から、古志加の恋路を微細に語ってもらった。なんともウズウズ、むずむずする恋愛の末に、古志加は恋愛を成就させた。
そんな話を聞くと、古志加のことを可愛いと思ってしまう。
恋の話の効果である。
ちなみに、この恋の話は本人不在のところで語られた。
「わーほーい、ありがとうございます!」
無邪気に笑った古志加は、ぴょん、とその場で飛び跳ねた。
「まあ……!」
可須美はつい、ゆっさと揺れた胸に目が釘付けになった。
「おおきい。」
以前、
可須美も大きいほうだと思うが、古志加は、可須美より、立派であった。
人は、────同じ女性同士であっても────豊かすぎる胸を見ると、つい、おおきい、とつぶやきたくなってしまう生き物であると、可須美はこの時になって悟りを得た。
古志加は、自分の頭の上をおさえて、てへっと笑った。
「えへへ、良く人から言われます。あたし、普通の男と同じくらい、背丈あるんで。」
(ああ、ちがうわ、古志加。それはね………、きっとあなたの胸………。
いえ、言わないほうがいいわね。)
「また、衛士としての話をしてちょうだい。女なのに、剣をふるって、いつ話を聞いても、感心します。」
「はい、いくらでも!」
古志加はよく日焼けした顔で、明るくにこにこ笑う。
「可須美さま、ご機嫌麗しゅう………。あ、古志加だ。」
ふらりと
「可須美さま、ごきげんうるわしゅう。古志加だーっ!」
「あら、
今は来る時間ではなかったはず、と、首をかしげた。
「ふきのとうを見つけて、可須美さまがご存知かどうか、と思って、ふきのとうを持参しました。このあと、すぐに博士のところへ向かいます。」
「ふきのとう、何かしら? 見せてください。」
可須美は好奇心でわくわくする。
「これです………。」
「隷冬花ね。唐でもありますわ。」
「そうですか。」
「見せてくれて、嬉しいです。
また、何か見つけたら、見せてください。」
「はい!」
「古志加だー! 遊んでー!」
「いいよお。があおお。たーけびすざくだぞぉぉ。」
古志加は、五歳の
「きゃっ、きゃっ!」
左腕を治療してもらった
「ひっ。」
と顔をひきつらせたが、古志加に遊んでもらってるのを見て、あからさまに、ほっとした顔をした。
↓挿絵です。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16818792439501860829
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