第3話:箱入り娘
ある家)
閑静な住宅街のとある一戸建て。隣の家との距離が近く、庭なんて申し訳程度、畑はおろか花壇を作るのも難しいほどの庭。車用の駐車場を1台分確保したらもうギリギリ。最近の家は塀を作らず、土地の境界に少しの植木をして開放感を演出する。
だから、表の道路から玄関が丸見えで距離も近い。防犯という意味では塀や門扉はあった方が良いのかもしれない。
そのとき、ある家の前に1台の宅配便屋のトラックが乗りつけた。宅配便屋としては都合がいい通りだろう。家は規則的に並び、いずれも道路に面している。なんなら、チャイムを押して在宅を確認してから荷物をトラックに取りに行っても間に合うほど。
(ピンポーン)「ん? 芽亜里か?」
家主は急いで玄関に向かい、ドアを開けた。
「はい」
「花園さんですね、宅配便です。少し大きいのでこちらに降ろしていいですか?」
男の期待に反して宅配便屋だったらしい。ここ数日、娘が帰ってこないことから心配していた。連絡もない。捜索願も出した。彼女が行きそうなところも探してみた。それでも一切手掛かりはなかった。
ないとは思うけど、誘拐だとしても身代金を要求する電話もない。
「あ、ここにお願いします」
荷物? 誰からだろう? そんなものが届く予定はなかったはずだけど……。もしかしたら芽亜里が何かを注文していたのだろうか。男はそんな事を考え荷物が玄関先に置かれるのを見ていた。
箱は2つ。長手方向に約1メートルのちょっと大きめの段ボール。宅配便屋は軽々と玄関先に置いたのだが、ドスッという音から割と重量物のようだった。
「ハンコは……?」
「あ、必要ないですー」
「ごくろうさま」
宅配便屋は去り、荷物が2つ残った。娘の花園芽亜里のことは気になるものの、見つからない以上待つしかない。何も考えずに、荷物を家の中の移動しようと思って驚いた。
「おも……。見た目より重たいな、これ」
段ボールは2個ともそこそこの重さがあった。そこで男は玄関先で開封して中身を1つずつ運ぶ方針に切り替えた。
カッターが無かったので、ハサミをカッター代わりにして止めてある透明テープを箱の継ぎ目に当てて切って行く。男が段ボールを開けた時、それは見覚えのあるものだった。
「うっ、うわっ! うわーーーーーーっ!!」
その中身を見て男は尻もちをついて驚いた。目の前に見えていたものがまだ信じられないでいた。自分の目で見ているのに信じることができない状態。
そこに見えていたのは娘の顔。目を閉じて動かない。顔色は作り物の様に白かった。その娘が全裸で箱に詰められていた。箱は長手方向が約1メートルほど。幅は70センチほど。高さ方向も同様に70センチほどだ。そんな中にひと一人が収まるはずがない。箱詰めするためか、腕と脚は切断されていた。
「うわーーーーーっっ!」
その瞬間からしばらくパニック状態だったという。
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