第39話 やっぱり一大事になるとカルティエのところに行っちゃう
一年G組に戻るとカルティエの姿はなかった。
「フィリップくん。どうかしたの?」
「あ、ああ、シャネル」
シャネルの好感度は闘技場の一件で戻っているみたいだ。カルティエと三人の時と、俺とふたりっきりの時はくだけた喋り方になっているのでわかりやすい。
「ルティを見なかったか?」
「ううん。あたしは見てないよ」
「そうか、ありがとう」
シャネルに礼を言いながら手を上げて教室を出て行った。
カルティエはどこに行ったのだろうか。
一分一秒を争っているわけではないが、自分の悪い考えが思い付いてしまった時、どうしようもなく動かないといけない気になってしまう。
そこですぐにカルティエのところへ向かう辺り、俺は完璧にカルティエ推しなんだなぁとしみじみ。
「あいつが行きそうな場所、か」
ブレイブアンドレアならすぐにわかるんだけどな。
あいつはカフェ巡りが好きだから、新しい街に着いたらまずカフェにいることが多い。
しかし、今は学園内。学食はカフェって感じでもないしどこにいるのやら。
あとあいつが好きなものは──。
俺は思い当たる場所へと向かうため、階段を駆け上がった。
♢
「相変わらず高いところが好きだな」
俺の予想は的中。
カルティエはネコと高いところが大好きだ。
こちらが声をかけると、振り向いてくれる。
クールビズ姿のカルティエは同い年とは思えないほど大人びており、クールなお姉さんって印象だ。
「見つかっちゃいましたか」
てへっ、なんて可愛らしく舌を出す。大人びた印象のクール女子が、少女のような顔をするギャップに、ついつい笑みがこぼれてしまう。
「俺達かくれんぼしてたっけ?」
彼女の隣に立つと、下の方を指差しながら教えてくれる。
「ここからご主人様が校長先生と話をしているのが見えましたよ」
「あらま、丸見えだ」
「そのあと私の名前を叫びながらダッシュしておりましたので」
「おいおい。だったら俺のところに来てくれよ」
「ご主人様なら私を見つけ出してくれると信じておりましたので」
「凄い自信だ」
「でも、ご主人様は見つけてくれましたよ」
真っ直ぐに純粋な瞳で見つめてくる。
「もし、また私が勝手にかくれんぼをしたら見つけてくれますか?」
彼女の言葉に少しばかり昔のことを思い出し、鼻で笑って答えてやる。
「ルティのかくれる場所なんて単純だからな。すぐにわかるよ」
「あ、ひどーい」
あははと互いに笑い合うとカルティエは、「それで」と本題に入ってくれる。
「大好きなメイドの名前を叫びながらどうかしたのですか?」
「自分で言うのはどうなんだよ」
「事実ですので」
んー、まぁ事実か。
「そんなことよりもラスボスがやばいことになってんだ」
「あーでたーらすぼすー。昔っからご主人様はその謎の空想の人物と戦っておりますね。学園に来たら解決したのではありませんでしたっけ?」
「正直、なんにもうまいこといってない。このままじゃラスボス先生がラスボスになっちまう」
「よくわかりませんが、緊急事態ということですね?」
「ああ。とりあえずオメガを一緒に探してくれ」
こちらの言葉に、「あーらすぼすというのはオメガ先生のことだったんですねー。納得―」と頷いてくれる。
ま、オメガってラスボスっぽい見た目してるもんな。
「私はご主人様の専属メイドですので、ご主人様の命とあらばなんでも致します。ただ、他にも探すメンバーを増やした方が良いのではないでしょうか?」
「うーん……」
そりゃ探し物は人数をかけた方が見つかりやすい。
しかし、俺以外に真実を知らないこの世界において、果たして単純に人数を増やして探すという行動が正解かどうか。
まだ状況がはっきりしていない中で、クラスメイト達に先生捜索を依頼して、もし見つかった時に魔王になっていたりしたら収拾がつかなくなるだろう。
ここは俺の言うことを全肯定してくれる右腕のカルティエだけに頼るのが得策かな。
もしなにかあった場合、すぐに逃げれるだろうし。
「俺とルティのふたりが良い」
「おっふ♡」
ん、んんっ! と喉を鳴らすカルティエ。
「すみません。興奮のあまり、おっふが出てしまいました」
「興奮するのは構わないが、一緒に先生を探してくれ」
「御意」
「お前、そんなキャラじゃないだろ」
「わかってませんねご主人様。悩んだ末のふたりが良いって言葉がどれほどまでに私の脳を破壊したか。今ならご主人様を担いで世界の裏側までダッシュできますよ」
「わー力持ちー。でも、その体力は先生捜索に当てよう」
「御意」
「脳を破壊されたらその返事になるのね」
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