12−2話 一津ぼたんの遁走
「ひぃ……!」
拝啓、お母さんお父さん。
私は今、なんかすごく速いお姉さんに追いかけられています。
(ムリムリムリムリ、死んじゃうって!)
私の今の全力ダッシュを秒速5メートルとすると、鬼の人が馬……時速70キロで秒速が――
「19!?死ぬ死ぬ死ぬ!14メートル毎秒で距離詰まるって何!?」
しかも全力ダッシュは50メートル走の記録だから、実際には私はもっと遅いわけなので、普通に死しかあり得ないってことになってしまう!
ああ、今のうちにお母さん達に遺書を残しとかなきゃ……。
『計算速ぇな。安心しろ、ルートは教えたはずだ。分からなくても現在地を言ってくれればすぐに伝える』
『それに一直線ならそうってだけでしょう?階段と曲がり角を使えば14メートルなんて余裕で稼げるわよ』
とは言われてもだよ!巻き込んだ私が言うのもなんだけど、流石に脳筋過ぎませんかねあなた達!
走ってるし意気地なしだから口には出せないけどさぁ、全員生還を目標にしてるなら私を走らせるよりも他の人が複数回走ったほうが良いんじゃないのかなぁ!ホントに言えた義理じゃ無いけど!
「ひぃっ!」
後ろからドタドタと音が迫ってくる。やばいやばい、速く曲がらないきゃ――――
「あっ」
その瞬間、焦りのせいか疲労のせいか、私は躓き、その場に倒れてしまった。
そして死を実感するよりも先に、メアリーさんは私の上を走り抜けていった。
「―――――――――」
どうやら彼女の歩幅は、私の身長をゆうに超えているらしい。私を飛び越えた彼女はそのまま、奥の教室の扉にピシャン!とぶつかっていた。
(……逃げなきゃ!)
思わず止めていた呼吸を再開し、私は来た道をひたすらに走り抜ける。
『おい、音が止まったぞ、大丈夫か?』
「あ、私は――」
音声に返事をしようとした瞬間、また別の人物の声に遮られた。
『ぼたんっ!大丈夫なの!?』
「あ、うん、大丈夫。取り敢えず今は」
あやめちゃんは心配性だなぁ。そりゃ私もさっきはあやめちゃんが心配だったけど、私は焦らず信じて待っていたんだから、あやめちゃんも静かに帰りを待ってもらいたいものだ。
ってカッコつけたけど普通にだいじょばないよねこれ。もう後ろから音聞こえるもん。ものすごい勢いで距離縮まってるもん。
(でも、なんとなくわかった。アイツは普通の人間よりも、加速し切るまでに時間がかかるんだ)
スマホの画面で迫ってくるまでの秒数を確認していたけど、明らかに遅かった。これっていい情報なんじゃない!?今すぐ伝えたいけど……そんな元気は私に無いので逃げ切ってから伝えよう。
「あ――」
ようやく
だが、ゴールを目の前にして、やる気が湧いてきた。
「必殺――
声に出すつもりだったがそんな体力は残っておらず、なんなら呼吸が上手くいかずにまたもやコケてしまった。ただ、今回は顔から女子トイレにスライディングしたのでセーフだろう。衛生面ではスリーアウトレベルな気がするけど、緊急時だしね。
「まぁなんかよくわからんがお疲れさん。あとは俺に任せろ」
そう言って跳杜先輩は駆け出していった。なんだかんだ面倒見いいんだな、あの人……。
一津ぼたん逃走成功 残り時間:16分
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