第21話
5年前とはまるで見違えるまでに綺麗になった美緒に、渚はまるで自分が異世界、それどころか、自分はこのまま美緒の隣にいていいのかと不安になってきた渚の腕を掴み、部屋の中に強引に連れ込む。
「渚君。いつまでもそんな所に立ちすくんでないで早く中に入ってほら!」
「みみみみい美緒!」
美緒の手を振り払おうと、彼女の手を掴もうとした瞬間…奥の部屋から声が聴こえてきた。
「やっと主役のお出待ちか! 泉石! 久しぶりの外で迷子にもでもなったか?」
「誠也さん! その言い方はないでしょ? 渚君の出所を美緒ちゃんからを訊いて一目散に私に飛びついてきたくせに」
「おい! 樹利亜!」
秘密をバレされて急に慌てふためく。
「誠也さん。今更隠してどうするの? 本当の事でしょ?」
「…」
樹利亜にとどめの一撃を食らって撃沈。
「堂城…羨ましいぞ! 樹利亜に抱きつくなんて…」
「七瀬! お前には関係ないだろう!」
「関係ある! 俺も、樹利亜に抱きついたい!」
「…」
七瀬の言葉に、さらに堂城は言葉を失う。
そんな堂城に、意外な人物が助け舟を出す。
「龍治さん! いい加減にして!」
黙って状況を見詰めていた泉が、旦那である七瀬龍治の頭を自分のバックで力一杯叩く。
「泉! お前何するんだよいきなり!」
訳も分からず頭を叩かれた龍治が頭を抱えながら、妻である泉を睨みつける。
「貴方は、いつまで樹利亜さんを傷つけるつもりなの? 樹利亜さんは…」
「…泉ちゃん。私なら大丈夫だからねぇ?」
樹利亜が、七瀬と泉の間に割っ入り、泉を宥める。
「でも…」
「もう、泉ちゃんはそんな事気にしなくていいの! 私には…ちょっと誠也さん! なんでベランダに居るの!」
そう言うとにいつの間にかベランダに逃げ込んでいた誠也を捕まえ、泉の元に連れてくる。
「樹利亜! やめろ! 俺は行きたくない!」
「いいから来なさい!」
「解りました」
強引にベランダから連れ戻された誠也は、場が悪そうに泉…そして、自分達の会話をムッとしながら見ている七瀬の顔を交互に見る。
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