鏡の中

第1話

拝啓 泉石渚様

 師走も残りわずかとなり、新年に希望を抱きながら、残り少ない日々を過ごしています。

 渚君。私は、今、小さな写真館で働いています。

 その仕事の片割れ、来年の春に写真集を出版する事になりました。

 びっくりでしょ? 驚いてるのは私も同じ。

 だって、今回の出版の話も、岡宮永輝さんと結婚している時に趣味でやっていた写真用ブログを偶々写真雑誌の女性編集者の人が見て、写真を出しませんかってコメントを送ってきてくれたの?

 だから、最初は悪戯だって思って無視してたの?

 だって、5年間ブログの写真を投稿していて一度もそんなメールきたこともなかったし、5年間、今の仕事の合間や休日を利用してコンクールや公募展に応募してたけど、賞を受賞できたのは5年間で小さい賞が一度だけ。

 だからこんな私に出版の話なんてくるわけがない。

 でも、それからも同じ人から女性編集者の方から何度もメールが届いたの? 毎回同じ言葉をつけて。

「一度でいいので会って頂けませんか?」

 このメールをきっかけに、私は、この女性編集者に会いに行く事にしたの? 

 そして、女性の私の写真に関する熱意に、この人なら信じられる。

 この女性なら、安心して任せられるって心の底から思ったの。 

 渚君。

 最初の読者になってくれる?


追伸

 今回は、西條さんに無理を言ってこの手紙を送らせて頂きました。

 なので、西條さんをどうか責めないで下さい。

                           泉石 美緒

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