朧編 最終章 最後のページ

第1話

「先輩は、僕を一人前の探偵に育ってくれた恩人で、いまでも僕の憧れの探偵です。でも……」

 ゆっくりうしろを振り返り、純也に背を向ける、そのまま、夜景(イルミネーション)に向かって大声で叫ぶ。

「純也先輩の鈍感ばか野郎! いつになったら僕……いやぁ? 僕らのこと信用してくれるんですか?」

「!」

 悠馬の突然の叫び声に、純也は思わずその場に立ち上げる。

 すると、そんな純也の元に、悠馬が走って駆け寄り、そのまま純也に抱きつき、

「……純也先輩? だから、その……」

 言いたい言葉は、すぐここまで出ているのに、それを口に出すことができない。

「……悠馬。ありがとう。けど、俺ならもう大丈夫」

「!」

 ゆっくり、悠馬を引き離し、左手で彼の頭をポンポンと優しく2回叩く。

「護ってやれないといけないからなぁ? 馬鹿で、純粋で、だけど、少し寂しがり屋で独りでいるのが大嫌いな馬鹿な糞野郎の親友がつくった居場所を……」

 言葉の途中で、感極まって涙が流れる。

「……恭輔。お前は本当、馬鹿でまぬけで、けど、誰よりも優しくって、最高の親友だよ! だから安心しろ! 恭輔! お前が戻ってくるまで、お前の居場所は、俺が護ってやる!」

 そう高らかに、悠馬と夜空に向かって宣言にすると、彼に向かって、

「悠馬! 今から! みんなでクリスマスパーティーするぞ!」

「いいいまからですか!」  

 純也の突然思い付きに驚く。

 確かに、今日は、クリスマスですけど、俺たちはともかく、他の人には、予定があるんじゃないですか?

 城谷純也は、2ヶ月前、妻の由梨と離婚した。

 その理由は、自分が裏社会に復帰することで、妻を危険(報復)が及ぶことを防ぐ為。

 由梨は、最後まで離婚に同意してくれなかったが、最終的には、自分を危険に巻き込みたくない純也の気持ちを汲んで離婚に同意してくれた。

 それでも、完全に由梨との関係が切れた訳ではない。

 今でも、お互いの時間が会う時は、完全に二人っきりでとはいかないが、食事をしたり、出掛けたりもしている。

「そう! 今から! ほら? 早しないとみんな帰えちゃうぞ!」

 自分を置いて! どんどん階段を置いていく純也。

「待って下さい! 先輩!」 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る