第10話

家に帰り、車庫に車を入れる。


玄関前に、人影があった。


「航平…」


「愛美、もう一度話がしたい。」


「私は話すことないよ!」


実家とはいっても、両親は仕事の都合でここには住んでないし、兄は都内で独り暮らしをしている。


ご近所の目もあるので、仕方なく航平を家にあげる。




いつもは私の部屋だったけど、リビングに航平を通す。


「どこに行ってたの?」


「私、実は清人の部屋にいたの。」


「清人?誰?」


「航平の部屋の下の人」


「清人と航平の話、私、聞いてたよ。」


「そっか。ごめん、愛美に内緒で合コン行ったりして。」


「別にいいよ。もう終わったことだし。」


「終わったことだしって、合コンに行ったこと?

それとも、俺たちの関係のこと?」


「どっちもだよ。」


「俺は納得してない!」


「航平は、私を裏切ったんだよ?」


「裏切ったから、別れる?俺への気持ちはそんなもんだったのか?」


「航平が言う?私を簡単に裏切れるほど、私への気持ちがちっぽけだったんじゃないの?」


「いつも不安だった。愛されてる自信がなかった。研究発表の準備で会えなくても、愛美は平気なんだ。愛美は俺がいなくなっても平気なんじゃないかって。アイツは俺のことを好きだって言ってくれたんだ。だから、たまに会ってた。」


「航平に会いたかったよ。研究発表終わったら会えるって楽しみにして。それで今日行ったの。でも行ってよかった。今日行ってなかったら、私、ずっと浮気されてたってことでしょ?もしかすると、私の方が浮気だったのかもしれないよね。」


「愛美、俺は愛美が一番だよ。アイツとは別れるから。」


「もう無理だよ。航平のこと、絶対疑っちゃう。」


「仕方ないよ、俺が悪いんだから。」


私のスマホが着信をつげる。


「もしもし、清人?」


『アイツ行ってる?航平』


「うん。」


『代わって』


「清人から」


「えっ?…もしもし」


清人、航平と、何話してるんだろう。

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