第74話

「あー、もうっ。帰したくなくなるから、本当に送る。」


長いキスのあと、廣田くんは自分の髪をくしゃっと掴みながら言った。


あたしは服を着て帰る支度をする。


二人で家の外に出ると、自転車に股がって携帯を弄る隆太先輩がいた。


「陽緋ちゃん?」


自転車を止め、あたしに近づいてくる隆太先輩に、


「りゅーちゃんどうしたの?」


と、あたしの前に立って廣田くんが訊ねる。


「お前、陽緋ちゃんのこと、本気なの?」


「本気だよ?」


「亜美のことは、もういいの?」


ジャリ…という音がして、見ると亜美先輩が角から出てきた。

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