第26話

日本庭園を歩いていき、日本家屋に入ると、個室に通される。


「いらっしゃいませ」


熱いおしぼりとお茶を出され、


「メニューをどうぞ。お決まりになりましたらこちらのボタンをお押しください。」




「好きなものをどうぞ。遠慮しないで。」


「遠慮しませんよ?じゃ、A定で。」


A定は、お刺身、天ぷら、小鉢などなどで、デザートつき。


田原さんが呼び出しボタンを押す。


「お待たせしました。お決まりですか?」


「A定2つ」


「A定2つですね。しばらくお待ちください。」




仲居さんが下がったあと、ぼーっと中庭の枯山水を見ていたら、田原さんが


「美咲。」


と呼ぶので、田原さんの方を見た。


「初めて美咲を見たときは、キレイでかわいいコだなって、1日1回顔が見られたらラッキー。それくらいにしか思ってなかった。」


私の手を握りながら

「でも、話すようになって、仲良くなって、見るだけじゃ足りない、もっと一緒にいたいと思うようになった。

僕のこと、ちゃんと見てほしい。できれば好きになってほしい。」

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