第9話

携帯があるから必要ないとはいえ、ファックスつきの家電が留守電を表す点滅をしている。

再生ボタンを押すと


「どこか行ってるの?」


大好きな人、創(そう)の声。

一時間ほど前、創が仕事が終わって20分後くらいに電話してきたみたい。


バッグからスマホを取りだし、創にライン電話…しようとしたら、呼び出し音が鳴り出した。


「田原さんからだ」


「もしもし?」


「もしもし?起きてた?」


「ふふ。部屋に入ってまだ2分くらいなんで、起きてます。田原さんは帰り道ですか?」


「うん。今日は家に帰れないから、寮に泊まるよ」


「寮?」


「うん。家に帰る時間がないときに寝るだけの、風呂なしトイレなしの、下宿宿みたいなとこ。

小さい台所ならあるよ?今度来る?お茶くらいなら出せるけど。」


「じゃ、早苗と真澄と一緒にお邪魔しますね。」


「え?ま、いいや。

また6人で、今度飲みに行こう。飯塚さんの先輩がやってる店があるらしいよ。」


「是非ぜひ。じゃ、おやすみなさい」


「おやすみ」


明日は早出だから、シャワーして早く寝なきゃ。

メイクのノリが悪くなる!と急いでシャワーし、基礎化粧品をつけベッドへ。


「あ、そうそう」


『カナさんちに、早苗たちとおよばれして、出かけてたよ。電話かけ直せなくてゴメン。』とラインを打ち、そのまま夢の中へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る