2-4 ラーリスの信徒、モーガン

<前回までのあらすじ>

 ハルーラ教会の旗は折られ、邪教ラーリスの手に落ちていた。冒険者一行は教会に村人を集めて虐げていたラーリス信徒のモーガンを倒し、これを捕縛した。


ガンデイン:「ここで何があったかキリキリ話してもらおうか! 別にお前が正直に話さないなら虐げられてた村人に聞いてもいいんだけどよっ!」


ラーリス信徒モーガン(GM):「ふむ。よかろう」


ガンデイン:「なんでこいつ、こんな偉そうなんだよ」


ピッピ:「ぐるぐる縛られてるのにね」


モーガン(GM):「この村は元々、導きの神であるハルーラ神を信仰する心優しきものたちのみが住む村であった。しかし、『魔剣を持つ魔神』を連れた仮面の男が突然やってきて一夜にしてこの村を支配したのだ」


ガンデイン:「さりげなく自分も元は心優しい人間だったアピール挟んでくるな」


ピッピ:「面の皮が厚すぎるっぴ」


セリーナ:「あなたはその仮面の男の軍門に下ったと言うわけですね」


モーガン(GM):「そうだ。ヒューリカーと名乗る仮面の男は魔法で次々にアザービーストを呼び寄せた。村人たちは為すすべなく逃げ惑うしかできなかった。そしてヒューリカーは自身が村を離れる間の代理として我を選び、邪悪な教えを授けたのだ」


ガンデイン:「ほー、じゃあそのヒューリカーとかいう親玉はこの村にゃいねぇのか。どこ行ったんだ?」


モーガン(GM):「さらなる布教のため、クロウズネストの街へと向かった」


ガンデイン:じゃあ入れ違いになっちまったんだな。


アロン:クロウズネストにそんなヤツが紛れ込んでるってことか……。


セリーナ:「村のために少しでも一矢報いようとは思わなかったのですか?」


モーガン(GM):「いや、高位神官に魔神までついててそれは無理があろうというもの。我も生き残るため必死だったのだ」


ガンデイン:「まぁそりゃそうだ。にしてもオメーはノリノリ過ぎというか……まあ素質があったんだろーけどな、邪教徒の」


モーガン(GM):「ヒューリカーは我に『そのうちこの村に魔剣を持ったグラスランナーが現れる。始末して魔剣を奪え』と命じた」


セリーナ:「その高位神官は今もうここにはいないんですよね。ラーリスの信徒になってしまったのなら、アザービーストくらい魔法でどうにかできなかったんですか?」


モーガン(GM):「ラーリスの教えは我の為したいようにことを為すのを推奨した。普段、我を見下していた村のものたちの頂点に立ち支配するのは甘美な誘いであった」


セリーナ:「カスですね」


アロン:「全然心優しい村人じゃなかったな」


ガンデイン:「こいつなんでこんな堂々としてんだよ」


ピッピ:「魔剣を持つ魔神はどうしたっぴ? ヒューリカーって男と共にクロウズネストの街へ向かったっぴか?」


モーガン(GM):「いや、魔神はまだここにいる。この教会の地下で力を蓄えているのだ。日に一度、家畜を生贄として捧げるよう我に命じてな」


ガンデイン:ほーん。……んじゃ、そいつが今回のボスってことか。


アロン:「放置してはおけないね、倒しに行こう」


ガンデイン:「その魔神がどんなやつか姿とか説明できるか?」


モーガン(GM):「名前は知らんが長い尻尾の生えた二足で立つ魔神だ」


セリーナ:「長いしっぽの生えた二足で立つ魔神……」


ガンデイン:「該当する魔神、多そうだなぁオイ」


アロン:「この間戦った魔神もそんな見た目だったか。肌の色は青銅色だったな」


モーガン(GM):「むっ、確かに肌は青銅色をしていたぞ」


セリーナ:「それならその本人……本魔神でしょうか」


ガンデイン:「ありえそうだな。リベンジマッチってわけだ。腕が鳴るぜ!」


アロン:「ピッピ、〈コモン・ルーン〉はまだ使えるかい?」


ピッピ:「ちょっと精神的疲労が重すぎて駄目そうっぴ。はぁー、神官からのトランスファー、欲しい」


セリーナ:「………………」ちらっと縛ってあるモーガンを見る。


モーガン(GM):「トランスファー!」


ガンデイン:そういえばトランスファーの使える5レベル神官だったわな。


モーガン(GM):「ここまでしたんだ、我の命は保証してもらうぞ」


ガンデイン:「ま、突き出した後に協力的だったとは言っといてやらぁ」


セリーナ:「殺したいわけではありませんからね、相応の罰は受けてもらいますが」

もう残りのMP《マナ》、全部絞りとっておきましょうか。


ガンデイン:「そうだな。セの字にも残りのMP《マナ》を寄越しな」


モーガン(GM):「トランスファー!」


ピッピ:神官を捕虜にするとこんなに良い事があるんだっぴねえ。


セリーナ:5レベル神官の命大事人間なんて中ボスにするから……


ガンデイン:「あ、地下って灯りあるか?」


モーガン(GM):「灯りの類はついておらん」


ガンデイン:じゃあセの字に松明持っといてもらうか。


セリーナ:松明を持ちます。ぶんぶん!


ガンデイン:危ないから振り回すな。しっかり持て。


ガンデイン:あとはさっきみたく挑む前に補助魔法かけて突撃だな……。


アロン:ピッピ、よろしく。


ピッピ:カンタマ4倍、エンチャント2倍でかけるっぴ!


ガンデイン:俺も【エフェクト・ウェポン】かけるか。土属性指定で、ピの字と兄貴に。これで物理ダメージが上がるぜ。


アロン:助かるよ。


セリーナ:では【フィールド・プロテクション】で(コロコロ……)1,2。ぎりぎり成功です。


ガンデイン:こええ出目だなぁ!


アロン:じゃあ、突入しに行くか。モーガンは縛ったまんまで。


ガンデイン:置いてって村人に見張らせておけばいいんじゃねえの?


モーガン(GM):「そ、そんなことをしてみろ。復習に燃える村人が我をリンチするぞ。命の保証はするんじゃなかったのか! 我も連れていけ。どうせ、魔法を使うだけの力はもうない、敵に回らないと分かるだろう?」


アロン:「まあ、それはそうか……」


ガンデイン:「自己責任だと思うけどなぁ、オイラ。まぁ好きにしな」


セリーナ:逆にMPもないのに連れて行って役に立つんですか?


ガンデイン:だよなあ……。


セリーナ:戦闘中は後ろに座っててもらいましょうか。


アロン:居るだけなら邪魔にもならないだろうしね。


モーガン(GM):「〈魔香草〉を焚いてくれたら【キュア・ハート】で癒してやろう」


アロン:「悪いが神官は間に合ってるんだ」


ガンデイン:「魔法使う力がないから連れてっても大丈夫って言ったのオメーだろ」まぁ、いつまでもこいつとダベってても仕方ねぇ。行くか。


GM:じゃあ地下への階段を降りると……地下室に魔神の姿はなく、壁には扉があります。


モーガン(GM):「はて? こんなところに扉などあったかな?」


ガンデイン:「はあ?」


アロン:「どういうことだ?」


モーガン(GM):「魔神はこの地下室にいつもいたはず……我にもわからん」


セリーナ:地下室に入ってすぐ戦闘だと思っていたのですが……想定より道のりが長いですね。強化魔法バフの持続する3分で戦闘までいける?


ガンデイン:「この扉の奥に逃げたってことかぁ? ……行ってみっか」鍵とかかかってるかドアノブをガチャガチャしてみるけど。


GM:鍵などはかかっていません。罠もないよ。


ガンデイン:じゃあ開けてみよう


GM:奥へと続く通路が見える。


セリーナ:道のりが長いですね! さっきかけたバフが持ちません!


GM:そうだね。歩いてる間に3分たって支援魔法の効果が切れるよ。


セリーナ:ラーリス信徒くんが勝手にMP切らしただけになっちゃいましたね。


アロン:ここから先は斥候役のピッピを先頭にして通路を歩いていこう。


モーガン(GM):「こんなスペース、教会の地下には今までなかったぞ。どうなっている!? 我の知らないうちに何が起こっている……」


アロン:「異様だな、どうする? このまま進むべきかな?」


ピッピ:「ピッピは一度、退くべきだと思う」


ガンデイン:「まさかあの扉が魔界に続くゲートだったとかだとシャレにならないしな。ピの字の言うとおり一度引き返すか」


セリーナ:「そういえば魔神は毎日生贄を要求しているんでしたね。生贄が来なければ出てくるでしょうし、扉に罠を張っておけば勝手に引っかかってくれるんじゃないでしょうか」


ガンデイン:「おっ、冴えてるじゃねぇか」


アロン:「なるほど、面白い考えだ」


セリーナ:「長時間出てこなかった場合にクロウズネストの都に行った仮面の男を自由にさせてしまうのだけが気がかりですが……」


ガンデイン:「とはいえ結構デカい街だぜ。すぐにどうこうなるとも思えねぇんだよな……」


アロン:じゃあやるか、罠作成判定。


GM:どんな罠をはる?


ガンデイン:油と松明使って簡単な着火罠でも作るか?


セリーナ:やはり古典的な落とし穴というのはどうでしょう?


アロン:地下室の床ぁ、掘るのは大変だろ。


GM:石だたみ系の床なので穴は無理そうだね。


セリーナ:シンプルにドアの間にめちゃくちゃ汚いもの挟んでおくのはどうでしょう?


アロン:小学生の黒板消しトラップじゃないんだから


ガンデイン:あ、そうだ。村に使えそうな武器ねぇかな。具体的にはナイフとかハンドアックスとかならあるんじゃねーか?薪割り用の斧とかねぇかなぁ。


GM:斧ならまあ、あってもおかしくないかな。


アロン:まあちょっと村を徘徊してるアザービースト倒して取りに行くか。


GM:アザービーストとの戦闘は省略でいいよ。


ガンデイン:ピンと縄張って斧を射出する罠でも作ろう。


セリーナ:斧を……射出!なんだか凄そうです。


GM:パチンコみたいなのね。


ガンデイン:そうそう。まぁ即席で作れるのはそんなもんだろ。


セリーナ:ギュインギュインギュイーン! ボタンを押せ!


アロン:そっちのパチンコじゃないよ。


ピッピ:じゃあ罠設置判定振るっぴよ。(コロコロ……)14ってところっぴね。


ガンデイン:後は作動した時に音が鳴るようにすれば近付いてきたのがわかるだろ。


アロン:そんな感じで。後は魔神の出方を伺おう。


 教会地下室に現れた謎の空間はいったい何なのか?魔剣を持つ魔神と関係あるのか?

 分からないながらもできることを考えて行動する冒険者たち。果たしてその策はうまく働くのか?

 次回、プレイヤーたちの頭脳が試される!

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