第2.5話 家

「鳥……」


 窓の外の景色へと一歩踏み出した感動に、周囲の全てが輝いて見えた。

 草木が茂る小高い場所で、開けた場所に小さな家だけがぽつりとたたずんでいる。家に差し掛かりそうなほど近くに生えた果樹に、小鳥が並んで羽根を休めながらさえずる。

 キラキラと陽光が降り注ぎ、緑の上に輝きを散らす。その下で踊る影は爽やかで心地よい。

 どこか懐かしいけれど、少し寂しさを感じる景色だった。


 僕の足取りの覚束おぼつかなさを心配そうに隣で見守っていたセンリアフが、視線を上げて僕の指先を視線で辿たどる。

 二人で同じものを見つめる安堵感に、ほんの少しだけ気持ちが高揚した。


「ラヴェニ鳥ですね。この辺りには餌が豊富でしょうから」


「たくさん巣もできそうだ」


「そうですね。その時期になれば」


 ぽかぽかとした陽気の中で、疲れを感じるより早くセンリアフが僕の肩をそっと支えた。

 その手が心強くて頼もしいのに、胸の中には真逆の焦燥が湧き上がった。

 けれど、それは言葉にするべきことではない。


「ああ、飛んでった」


「戻ってくることを望みますか」


「いいや。鳥は自由に飛べるからいいんだ」


 その光景は眩しくて。

 今この瞬間が一枚の絵画ならばよかったのに、と。ぼんやりとそう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る