「ただの好奇心ってこと?」


「いや、心未ちゃんを応援してる」


信じられん。


一旦半目になってから、袋から取り出して暫く出番を待っていた割り箸を握り直しコンビニ弁当に手を付けた。


私と天野の間で細々お弁当をつついていた桐が「天野さん、お昼食べましたか」と気になって訊いている。天野はそれについて「食べたよー。早飯だったの」と返した、


「心未ちゃん。『他の男に貰った服』って今着てるような男女兼用のって意味じゃないよ、


ちゃんと女の子の服着るんだよ」



終わったと思ったらまた始まった。続いてたんかいこの話題。



「善がくれる服がどんなのか知らないけど、それが女の子の服なら同じ系統のが良いかもなー。

目的は善に“その服どうしたの?”って訊かれる事だから」



自分が早飯して暇だからって饒舌に、この昼休みの間に弁当を平らげることに必死な私たちに話し掛けてくる天野。この野郎。


エビフライの尻尾が口から飛び出ていてもうその話題は終わったんだよと忠告できない。


「ふぁふぁれ」


「え、黙れ?」


伝わるんかい。

天野の読唇術(?)に引きつつそうだと力強く頷いた。


「気のせいか〜


夏だしミニスカートとか良いじゃん。や、そんなんじゃ善の気は引けないか」



待って。うざすぎる。気のせいじゃないんだよ。

これはもう男どうこう以前に天野という人間がうざすぎる。

こんなのが桐の上司だなんて…嫌すぎる。


使える目だけで睨むと「心未ちゃん、飲み込むの遅いね。咀嚼のしすぎなんじゃない?」と言われ危うく箸を天野の両目目掛けて突き出すところだった。


そもそもさっきからずっと背凭れに腕を回していてそれも気に食わない。回されている桐は微塵も気にしてなさそうだが。花山院知愛にぶん殴られろ!



「もし訊かれたら『彼氏に貰ったの』って言うんだよ」



あーエビフライ美味しいなー



「そしたら善、心未ちゃんのことも女として見るかもよ」



「……」



迂闊にも、私のこと『も』って言い方に胸が痛んでしまった、のに。



「本当に?」



思わず口が動いていた。




一瞬、予想外だとでも言いたげな表情をした天野は小さく口角を上げる。


「そういうところがかわいいよね、心未ちゃん」



「口の上手い男、キライ」


「またまたー。好きなくせに」


「…ぶん殴るぞ」



どいつもこいつも。






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