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「霧雨はもうあんまり若くなんだから無理をしちゃだめだよ」と言って御付きの霧雨のことをよく美湖の姫は大切にしてくれた。(だけど、ちょっとだけからかうような言いかたをするときもあった)
そんなことを言われて霧雨はむっとして「まだまだ姫様には負けませんよ」と言って、むきになっていろんなことを張り合ったりしていた。(札取りの遊びや着物にする布を選んだりするときや、少し豪勢なお食事をするときなどだった)
とても仲のいい二人だったけど、たまに大きな喧嘩をするときもあった。(何回か本当に霧雨は美湖の姫のご両親から御付きをやめられそうになったりもした。そんなときは最後には美湖の姫が泣きながら謝ってくれたし、霧雨も泣きながら、わたしはこんなに年を取って、なんて子供っぽいのだろうと反省した)
美湖の姫はあんまりじっとしていることが好きではなかったからよく御殿のお外に従者を連れてお出かけしていた。もちろん霧雨はいつも美湖の姫のお側にいて、美湖の姫について行って、都の近くのいろんな場所に遊びに行った。
見渡す限りの花の咲き乱れる花の名所で、お花見をしたり、大きな川で小舟に乗って、お魚を釣ったり、緑色の草原を走る馬に乗せてもらったり、いろんな都の中ではすることのできないとっても素敵な経験をいっぱいした。
夏のお祭りのときには、夜空にたくさんの花火が咲く美しい(まるでこの世のものとは思えないような)光景を、籠にのって、出かけていって、まだあまり人々に知られていないような花火のよく見えるところから、一緒に花火をお団子を食べたり、お菓子を食べたり、霧雨は少しお酒を飲んだりしながら、見物したりした。
美湖の姫はいつも元気で笑顔でみんなと一緒に笑っていた。でも霧雨はそんな美湖の姫はときどき一人で隠れてこっそりと泣いていることを知っていた。小さなころの美湖の姫はとっても泣き虫だった。そして今もきっとみんなに隠しているだけで、美湖の姫は泣き虫なのだと霧雨にはよくわかっていた。(美湖の姫も霧雨がそんなみんなに隠している泣き虫な自分のことをこっそりと知っていることをちゃんとわかっていた)
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