1日目 2.憧れのカレのパートナー
第7話
二十分くらい走ってトラックは大きな敷地内に入っていった。
南国のようなヤシの木がしげった通りは、なんだかどこかで見たような気がする。
そこを抜けると、見えてきたのは――。
柵の向こうにおさるさんたち?
赤ちゃんもいる。うわぁ。かわいい。
その向こうはリスさんの檻、さらに行ったさきの檻では、パンダの赤ちゃんまで寝てる!
もしかして。
ここ、都心の有名な大きなリリコイ動物園じゃ……?
小さいころ、おとうさんとおかあさんに連れられてよく来たっけ。
お客さんはいないみたい。
今日は休園日なのかな?
奥のエリアでトラックがようやく停まったのを見計らって、わたしは思い切って荷台から飛び降りる。
とにかく、家に帰らなきゃ。
出口はたしか……。
うう、小さいときに来たきりだからぜんぜんわからないよ。
でも、じっとしてちゃ永遠に帰れないよね。
順路に沿っていけば、出口に出られる、かも。
とことこと、短いふっくらした四本足で、歩く。
途中、柵越しにライオンのいる檻を見た。
ひとつ大きなあくびをしたライオンが、トパーズみたいな琥珀色の目でぎろりとこっちを見る。
思わずびくんと全身が跳ねちゃった。
柵越しでもうさぎのサイズになって見るライオンの迫力は十割増しくらいで、すごく怖い。
こわごわ前を通り過ぎて、しばらく行くと、ふいに立ち止まる。
エリアが変わったのかな。今までとはちょっと違う雰囲気だ。
同じデザインのジャンパーやTシャツを羽織った人たちが何人か忙しそうに行きかってる。
どういう人たちなんだろ。お客さんにも、動物園の飼育員さんにも見えないけど。
なるべく人目につかないように物陰にかくれながら奥へ進んでいくと。
わぁぁっ!
「きゅきゅっ!」
感動のあまり、なんだか今自分が変な声を出したような気がする。
赤やピンクのレンガでかこまれた壁にベージュの三角屋根。草原と花々、白い柵にかこまれたそこには、ラブリーな小屋が立っていたんだ。
中はどうなってるんだろう?
好奇心が抑えられずにそっと、木の扉から入ってみると、小さいけれどきれいな生活スぺースがあった。
かわいいレースのかけられたテーブル。ハートや星のキルトで飾り付けられた壁。お風呂も水道も冷蔵庫もある。まるでマンションの一室みたいだ。
この動物園には何度か来たことあるけど、こんな場所なかったような。
いったいこんなかわいい家がなんで動物園の中に?
ふしぎに思って首をぐるりと回して、びくっと、頭の上にある耳が左右に開いたのがわかる。
生活スペースの前はうってかわった雰囲気だった。
カメラや機材がたくさんある。
そこに例の同じデザインの服を着た人たちが行きかっていて。
その中の一人の人の背中の文字を、追ってみた。
ん?
『エクレールがやってくれーる』……?
ききなれたフレーズ。
もしかして、これって――。
「うきゅっ」
変な声出しちゃった。
いきなり抱え上げられて、まじまじとのぞきこまれたから。
どうしよう。
見つかっちゃった……!
私の脇を抱えて持ち上げているのは、パーカーのフードを目深にかぶった男の子。
明らかにわたしより年上だ。高校生くらいかな。
パーカーからちょっとだけ除く目が優しい。
真剣な目でのぞきこむと一言、彼は言った。
「すげー、美人」
一瞬思考が停止する。
ちょっとだけ高めの、きれいなアルト。
この……声。
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