帰れない森へ捧ぐ

佐藤ビル

プロローグ

彼の肌は、あの日の銀世界と同じ色だった。青にも緑にも見える瞳は、あの日の空と、雪の間に見えた森の木々の色だった。

初めて見た銀世界に感動し駆け回る幼い私に、これから毎年一緒に来ようと優しく言った父は、その年の暮れに病で死んだ。それ以来、雪を見たことは無い。彼に出会わなければ、きっと一生その色を思い出すこともなかった。


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