第56話
手を舐めてくれているカイロを見て思いだした。カイロと会うために、確証もないのにここで何日も待ち続けたこと。
そうだ。私は、今まで何かを手に入れるために、努力と我慢を惜しまない奴だったよ。
ケンさんと一生会えないなんて決め付けてたけど。そんなこと、ない。
カバンから携帯を取り出して、連絡も、消去も出来なかったケンさんの電話番号を呼び出した。
「お願い。出て」
深呼吸をして繋がりますように、と願った電話は、プルルルルっと繋がってくれた。
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