第30話

その人は私を見てものすごく驚いて。




"カイロ"と呼ばれたその子はどこかに行ってしまって。




そこからは早かった。




「こっちきて」


「わっ!」




その人に左手首を掴まれて、私は元来た道を引きずられるように走った。訳も分からないまま走った。



「おい!ケン!まだ話は終わってないぞ!」という声を聞いてどこか冷静に、この人ケンって言うんだ、とか。



月に照らされるこの人の手、ものすごく白いなとか考えていた。

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