第20話

王都の治療院に到着すると、紹介状を手渡す。


治安隊の騎士様達と共にすぐに診療室へと通される。


豪華な邸宅のようで治療院と言われなければ分からないだろう。


ルーカスは診療の為に別室へと連れていかれた。


馬車を運転していた騎士が付き添って行った。




その間私は、騎士様と共に待機していた。


心なしか騎士様との心の距離が少し縮まった気がしていた。





「ご家族の方ですかな?」



診察を終えた先生が入室する。


「いいえ」


このやり取りを一体何回やらなければならないのだろう。



「そうですか。ならば詳しい説明は控えますが、彼の治療を行うには提供者が必要です。」


「提供者?どうすればいいんですか?」

 

先生は私の後方の騎士様を一瞥した後、

説明を始める。


「血液の提供です。検査の結果、体内に異物、恐らくある毒物の混入が見受けられます。昨日今日ではなくゆっくりと取り込まれたのでしょう。


 摂取することでゆっくりと弱っていくのです。解毒剤はありませんが、毒に侵された血液を浄化すれば回復します。


ですがあれだけ侵された血液を浄化する為には、新鮮な血液の提供者が常に必要です。特殊な装置で患者と管をつなぐことになります。


苦痛も伴いますし、彼とともにしばらく入院することになるでしょう。


ご家族と連絡は至急とれないですか」


毒物?


事件性ってそういうことだったのね。


病気ではないのね。


いったい誰がルーカスにそんなことを!


ううん、今はルーカスを助けることが先決



「提供者は血液型とか何か制限があるのですか?」


「いえ、特には。適合する必要はありません。志願者がいてくだされば、こちらの設備で患者の血液に適合するように変換することが出来ます」



「私が!私の血液を使ってください!ルーカスを、

彼を助けてくださいお願いします!」



私は深く頭を下げて懇願する。


「お嬢さん、失礼ですがご家族の同意はとれるのですか?


恐らく命を落とすことまではないですが、

ずっと装置に繋がれることになりますし、先程も言いましたが苦痛を伴います。


治療期間がどれくらいかかるかも分からないのですよ。


それに彼の同意も必要ですし、彼の意識が戻らなければ、ご家族の同意が。」



「緊急を要するのですよね?先生、わたしはルーカスが助かるならどんなことでも協力します。


もしも形式的な手続きが必要なら、ルーカスが回復してからでだめでしょうか」


「命を落とすことは確実にないのか?」



後ろに控えていた騎士様が尋ねる


「100%確実だなどと答えることはできません。

命を落とす可能性は低いでしょう

我々も最善を尽くします

ですが、提供者に何かしらの後遺症が現れる可能性は否定しません。」


「だそうだ。あなたはそれでもいいのか?ご家族には話した方がいい」


「彼を救いたい気持ちは我々も同じです。ですが同意も得ずに治療することはできません。

騎士団の方なら通信装置も扱えるでしょう。


同意は口頭でも大丈夫ですよ。

連絡がとれましたらお知らせください」


先生は退室した。


ルーカスの家族は…旦那様は、


ううん、ルーカスの意識があるときに説得を試みよう。


きっと反対されるだろうけど、大丈夫。


私は…エミリオと…


話し合わなければ。


私は騎士様と共に通信装置のある部屋へと向かった。








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