音の才能をどうか_。
亜諭
第1話
窓が空いている。
そこから見える景色は大層平凡なもので、曇りがちな空、森のように生い茂る木々。
その木々がちょうど屋根のようになり、僕の部屋にはほとんど光が入ってこない。
手元には先程から絶え間なく鳴り続けているメロディーを書き綴った楽譜、ヴァイオリン、時計。
最近は全くピアノに触れていない。
というより触れられない。
僕はヴァイオリンもチェロもコントラバスもオーボエもフルートも、だいたいの楽器はプロ奏者とそれほど差がない程まで演奏することができる。
だがピアノだけはできなかった。
平均的に見れば弾けている方なのかもしれない。
だが何かが足りない、僕はプロのピアニストが奏でるのと同じ音を出すことができない。
そんな僕がこれ以上ピアノに触れようとするのは音楽に対する冒涜以外の何物でも無くなってしまう。
しかしピアノのメロディーが無いことには僕の音楽は完成しない。
「都合よく才能あるピアニストが訪ねてこないだろうか…」
そう願わない日は無いが、そんな都合の良いことが起こる筈がない。
自分から探しに行く他、方法は無いのだ。
さて、今日こそは見つかるだろうか。
僕の音楽を理解できるピアニストが_。
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