第15話ー②
「ちょっと、こんなところで寝ないでくれる? 邪魔なんだけど」
目が覚めて、聞こえてきたのは八十五年ぶりの彼女の声だった。ぐらぐらする頭を押さえて、状況を把握する。手にはカサカサする触感、草、寝転んでいた、寝ていた。遠くに見える風車からすると、街の近くの丘か。
「うわ、何? 悪い夢でも見てたの?」
頬を伝う滴にようやく気付いて。拭っている手が何か握っていることに気付いた。マナから最期に渡された二つの指輪。ひとつは彼女に渡したくて渡せなかったもので、もうひとつは煮え切らない自分の背中を押そうとでも考えてくれたのだろう。マナが嘘をついてまであの村で改めて作ってくれたものだ。
思い出す、長く、長かった、夢ではないあの日々。あそこから、本当に戻ってきたんだ。
「夢くらいで泣いてんじゃないわよ。これから魔王を倒しに行くってのに」
戻ってきた。色々な人の想いを踏みにじって。破壊して殺戮して蹂躙して。あの世界の仲間達をすべて犠牲にして、ここまで戻ってきた。
厳しいことを言いながらも涙を拭いてくれる彼女を、仲間達を二度と失わないために。
あの世界の仲間達の想いに報いるために。
「……いくら君でもこの距離で攻撃魔法は撃たないよね」
「いくらなんでも殺すような真似はしないわよ。夢で撃たれたの?」
撃たれた。死にはしないけれど、本当に驚いた。自分が悪いのだが、最後の最後でとんでもない檄を飛ばされたものだ。あの時、魔王となっていたから処理できたものの、今の自分では到底対処できないだろう。
「本当……強くならないとね」
「この距離で攻撃されるのを前提にするのはおかしいと思うけれど」
まあ、やる気を出すのは悪いことじゃないわ。そう言って、微笑んだ彼女の手を引いて伝える。
「ルネ。戦いが始まる前だけど、結婚してくれる?」
「……終わってからにしなさい」
今度こそ、すべてを守り切るための戦いを始めよう。
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