1544年 家操11歳 加納口の戦い 米油

「家操、その女の子達はだれ!!」


 家に帰ると智から連れてきた女の子についての追及があったが、諜報活動の人員を連れてくるついでに諜報活動に従事できない小さい子供を石鹸製造を手伝わせることで利益拡大をするためと熱弁すると納得してくれた。


 別に同じ部屋で住むわけでも無いので安心してもらいたい。


 その日は布団で引っ付いて寝るのだった。







 秋になり、中村から連絡があり来て欲しいと言われ、中村に向かった。


 中村に到着すると村長たち含めて集まり、何事かと思ったが


「家操、お前さんは神童神童と呼んでいたが、本当に神のご加護があるのか? 見てみろこの田んぼを」


 見るといつもの米を植えたと思われる畑は稲が倒れて壊滅しているのに、俺が渡した米は稲に大粒の穂を実っていた。


 それは普通の米の数倍は実っている。


「それにお前さんの薩摩芋や馬鈴薯、蜂蜜もあれば周辺の村々が不作の中、おらが村は無事だ。もうお前さんに足を向けて寝れねぇよ」


「いやいや、俺はきっかけを与えたに過ぎませんから」


「できることならなんでも協力してやるぞ」


「うーむ、でしたら足を戦でやってしまった者を預かりましょう。俺のところに仕事があるので」


「いやいや、それじゃあ更に恩を売られることになるぞ」


「今度困った時に助けて貰いますよ。それよりも収穫があるんですから頑張ってくださいよ」


 実際見事に実っており、あれだけの降水量なのに中村だけは半分壊滅しても豊作と言っていいくらい収穫量になるだろう。


 実家に顔を出すとアニキがまだ蜜璃姉さんを孕ませていたし……


 智も一回実家に帰り家族に顔を見せ、1日中村で過ごすのだった。







「家操、良い情報が入ったぜ」


 多聞丸が朝倉と織田家で連合して美濃の斎藤家を滅ぼすための戦が始まるという情報を仕入れてきた。


「斎藤家も風前の灯火ってやつだろうな。謀反人にはお似合いの最後だぜ」


「ふむ……じゃあ多聞丸や部下の皆さんで斎藤家の証文を買い漁ってください。どうせ捨て値で売られているでしょうからただ同然で買い叩いてください」


「なんだ? 家操は斎藤家が勝つと見ているのか?」


「負けてもどこかで和睦をして家が残るに賭けます。捨て値で買うのですから別に気にならないでしょうし、もし斎藤家が残れば無くなるはずだった証文で銭を回収すればそっちの方が打撃になるでしょう」


「なるほど! 家操は面白いことを考えるな! やってやるぜ」


 というわけで大半が斎藤家が滅亡すると思って証文のパニック売りが起こっている美濃の町々で本当に捨て値で証文を買い漁った。


 忍者達に指示を出した俺は吉法師様は出陣しないが那古野城兵は重臣の方が指揮して出陣するらしいので、兵糧計算や武具の調達で活躍。


 吉法師様から与えられた銭を大黒兄さんの紹介の武具屋と交渉して足りない分を安く買い揃え、余った金で旗指物を追加で作ってもらったり、他の部署のミスをしたところに予算を充ててカバーをした。


 那古野城で働いていた者達の多くは俺を吉法師様に取り入って出世を狙う奸臣の類に見ていたらしいが、完璧以上の仕事をしたため陰口は出ても、仕事はできるという評価に落ち着いた。


 ミスを助けられた家臣からは感謝も受け、9月頃出陣していった。





 加納口の戦いという戦で、それはもうコテンパンに織田方が敗北した。


 経緯としては織田朝倉連合は土岐頼芸という美濃守護の男を焚き付け、美濃国内で蜂起させ、それを織田朝倉連合が支援するという流れだったが、土岐頼芸の城を斎藤道三は1万数千の兵で強襲し、あっという間に陥落させ、陥落したことを知らない織田方がその城に向かっている所を斎藤道三率いる美濃衆が奇襲を仕掛けたらしい。


 油断していた織田信秀は5千ほどの兵を連れて進軍していたが、奇襲により統率が崩壊し、身の回りの兵7人を連れてなんとか撤退。


 織田方の兵約2000名が奇襲を受けた近くの川に突っ込んで溺死し、信秀の弟等の一門衆や那古野城兵を連れて出陣していた那古野城家老の青山信昌等重臣クラスが多数討ち取られる大損害を受けて敗走してしまう。


 朝倉は土岐頼芸やその息子を回収して越前に撤退し、斎藤道三の美濃統一が完成する。


 俺は那古野城に戻ってきた負傷兵の治療に従事し、石鹸製造で連れてきたくノ一達も看護婦として動員し、治療と斎藤道三による尾張逆侵攻を備えた。


「家操様」


「多聞丸なんだ」


「斎藤家尾張侵攻の兆し無し」


「わかった。釣り上がった証文を売り払え。金の回収をしろ。大黒屋に俺の名前を出して協力を取り付ければ手伝ってくれるはずだ」


「わかりました」


 負傷兵の治療で馬糞を傷に塗り込むなどという行為は傷を膿ませるとやめさせ、一度熱した水で傷を洗い、消毒効果のある熊笹の葉で傷口を巻いていく。


「消毒用にアルコールを今度作らねぇといけねぇな」


 自衛隊の時に習った救急救護……しかもできる限りの治療ということでいくら気をつけていても破傷風にかかって亡くなったり、傷が膿んで腕や足を切断する者も多く出た。


 しかし、多くの者が助かったとして兵のおっちゃん達からは感謝された。


 なお、信秀様は翌月に低下した威信を立て直すために三河に侵攻し、城を落として尾張の虎は健在であると武威を示すのだった。







 時は少し遡って、中村から連れてきた畑仕事が難しい男達にじゃがいもの収穫による片栗粉の抽出とオナホール作りの仕事を与えた。


 最初はよくわかってなかったが、オナホールが想像以上に売れるのでオナホール職人になるために男達は片栗粉に竹炭を混ぜて硬さを出したり、中の凹凸の形を工夫したりと1ヶ月もするとすっかり職人になっていた。


「家操のお陰で穀潰しだった俺でも働けるようになったぜ……」


「ああ、片手を失ってもう駄目と思ったが、家操のお陰で食っていける」


「家操は村を凶作から救ってくれただけじゃなくてオラ達に仕事を与えてくれた……精一杯働かねぇと」


 と、皆やる気を出して働いてくれた。


 そして皆が働いてくれると俺の利益に繋がるのだった。







 証文を全部売っぱらった結果2000貫の利益を生み出すことができた。


 色々込みすると今年で2万貫は稼いでいるだろう。


 その金を使って事業を広めていく。


 味噌屋に投資をしてたまり醤油の製造量を上げたり、米ぬかから油を抽出する方法があった事を思い出したので大黒兄さんや吉法師様を誘って熱田と津島に水車付きの米油工場を建設し、負傷し農民をできなくなった者を集めて米油工場を稼働させた。


 ちなみに中村の子供で計算できる者を工場長をやらせたりもした。


 ちなみに米油の作り方は米ぬかを乾燥させて石臼を水車と連結させた圧搾機で圧搾し、油を抽出する。


 ヌメリ粉を作った後石鹸にするために使っていたソーダ灰を使うことで石鹸となる成分を除去する。


 この過程で副産物で米油由来の石鹸もできる。


 そしたら1晩冷やす事で蝋が分離するので蝋を取り除いて濾過すれば米油の完成である。


 石鹸、蝋、油と高級品を米ぬかで作ることができるというのは革新的であり、大黒兄さんが各地の村から米ぬかを買い取り、それを工場に卸す。


 工場で先ほどの工程で製品を作り、大黒屋に卸す。


 大黒屋が織田家の家紋を入れ、石鹸や米油を販売し、利益の一部を織田家に納める。


 製品を大黒屋に卸した時に俺に利益が転がり込んでくるって寸法で、水車の製造実験にもなった。


 毎月俺に人件費を除いて500貫、織田家に1000貫、大黒屋には2000貫の利益が出るので三方良し状態である。


「鶴! よくやった!」


「はは!」


 吉法師様からも褒められ、そのまま那古野城の油奉行に俺が抜擢されることになる。


 農民上がりが奉行職に就任は異例であり、妬みとか出そうであるが、上級武士にはオナホールを、下級武士や同僚には石鹸や油、ろうそくを贈ることで僻みや妬みを最小限に抑える努力を行った。


【実績 奉行就任】

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