第43話

その日が一日目だとしたら、今が二日目。




今日も撮影帰りの授業帰り。


けれど、少しだけ期待した店先の段差に彼の姿を見て。



また座ってぼんやりしてるなって、思った。





それで、現在に至る。




「女優です、犬飼 幸来です、憶えてますかー」




私の特徴的にそれくらいしかないから、覗き込んでそう口にする。


途端にまた、猫舌さんの眸には色が戻って、目の前の私に目を丸くした。



「驚いた!」



感情をそのまま口にして、徐々にこの前の記憶を辿っていく彼を目にしていた。





どうしてぼんやりしているのかはまだ知らないけれど、




今日の彼は切り花を手にしていなかった――――。

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