第36話

俺はそれに、「風華みたいのがいるからじゃねぇの」と返事した。



彼女は静かになるほど、と声を落とす。


分かってるんだか分かってねぇんだか。




「でも、デトワールの人って皆ご飯食べなそうだよ」



顎に手を添えて考え込む風華から目を逸らす。


「絶対食べてないよ」



念を押す彼女は顔を上げて、ついに何でかと聞きだした。





「ビョーキだからじゃねぇの」


「病気!?」



「そ、ビョーキ。皆仕事ばっか」



背中を屈めて答えるそれに、不思議そうな表情を浮かべる風華。


俺は無表情ながらにニィ、と口端を横に引っ張って、「お前はこうなるなー」と加えた。




風華はそれを真似して、「ううん、憧れます」と。


まっすぐ言った――――。

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