第49話 託される
「分かった?」
快い眠りからゆっくりと目覚める感覚。
目を開けるとパイロが真琴の顔を見つめた。
真琴は、うんうんと頷いた。
絢音と響介が、ハグをしている時に起きている現象をパイロが見せてくれた。
パイロの力で、絢音と響介の二人の世界を見ることができた。
これか……パイロの力とは。
人の繋がり、運命と呼ばれる絆を見ることができた。
これが、銀の創造主が恐れる力なのか?
「これで、君たちをエスピラールに招待する準備が出来た。いつでも行けるよ」
と言うと、パオロは、ベンチの上で倒れるように眠ってしまった。
「疲れているのよ……少し、休ませてあげて」
ウルペースが、パイロに上着をかけた。
絢音と響介は、照れくさそうに見つめ合っていた。
真琴は、ノウムの話の最後にグベルナに言われた言葉が頭に浮かぶ。
「真琴……爺は、このメッセージを持っていけということかもな……」
確か、そう言っていた。
僕だけが、元の世界に行ける。
人間が間違った方へ行かないように、伝えなければいけないのか?
僕は、何ができるのだろうか?
ここで見たことは、僕の頭の中に残る。
それが、僕に影響を与える。
影響された僕は、僕が発する言葉や絵や歌や映像となり、ほかの人に影響を与える。
何気ない僕の一言が、誰かの何かのきっかけになる。
それが、何を生み出すかは、分からない。
ちょっとした行動、仕草やつぶやきが、それを見ていた人にあるモノを気づかせる。
そして、とんでもないものを発明するかもしれない。
頭の中にある宇宙が、解放されるきっかけとなるのだ。
一人ひとりが発信者となる。
それは、本当に小さなことかもしれない。
自分が発する冗談やつぶやき、何気ない言葉が、
ある人には、すばらしいモノを気付かせるかもしれない。
誰一人、無駄な人間はいないのだ。
偶然はない。
全ては必然なのだ。
人間のほかの動物にはない能力。
それは、信じること。
きっかけにより、気付いた事を種とすれば、
その種から花を咲かそうと長い年月をかけて根気強く育てる。
信じてそれに力を注ぐことが出来る能力が発揮される。
その能力は、信じて突き進む人間しか持ちえない能力なのだ。
種は夢となり、多くの人間を動かすのだろう。
その為に、
僕は、絶対に元の世界に戻ろう。
「考え事か?」
響介が真琴に声をかけた。絢音も横に居た。
二人は、真琴を挟んで腰かけた。
「どこかに行っていたような気がするよ……
天国って花畑だって聞いたことがある……そんな感じだった」
響介が呟くように言った。
「そうだな、綺麗だったよ……二人とも」
「えっ、見ていたのか?」
と響介と絢音は顔を見合わせ、頬を染めていた。
「パイロにみせて貰ったんだ」
「そうか……、パイロってすげぇな」
「ああ」
「パイロが、目を覚ましたら、エスピラールに行こう。いよいよだな」
響介は、真琴の肩に手を置いた。
真琴は、なんて言っていいか困っていた。
自分だけが元の世界に戻るのだ。
この二人を置いて……。
「僕たちのことは、気にするなよ。すぐに追いかけるからさ」
響介の言葉に真琴が頷く。
「そうだ、戻ったら、私たちの両親に心配ないって伝えてほしいの」
絢音の声が、震えていた。
絢音は、これだけは、真琴に伝えておきたかった。
いつ消えてしまうかもしれない手を見つめていた。
響介が、絢音の手にそっと手を添えた。
絢音は、響介の瞳を見つめた。
真琴たちは、抱き合ってお互いの感触を確かめた。
その時、寝ていたパイロが伸びをしていた。
どうやら、目が覚めたようだ。
上半身を起こし、目を擦って周りを見渡している。
ありがとうって、自分にかかっていた上着をウルペースに返している。
そして、真琴たちの方を見て手を振った。
「出かけようか」パイロの大きな声だった。
真琴たちは、パイロの方に駆けて行った。
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