愛恋~心が求める存在を想う~
第1話
「お疲れ様です、
「
ひらひら舞う。
蝶が、雪が。
「もっと愛想良く、
「うっ……」
蝶が舞うのは、夜の時間。
蝶が踊るのは、暗闇の中。
蝶が力を使うのは、良い子が眠りに就いた時刻。
「あの、結葵様……」
申し訳なさそうな表情を浮かべながら私に近づいてくる
私は謝罪の言葉を向けたいはずの
「調査の結果、不備が見当たらなくて良かったですね」
「…………はい」
私の目を見ずに俯いてしまった初さんのことを気にかけてしまう。
でも、
「
大人の振る舞いというのは、まだまだとても難しい。
悠真様の年齢に近しい方なら、もっと上手く
その経験差を埋めるだけの年齢が私にはないから、悠真様の婚約者を装うのは何よりも難しいこと。
「結葵様、ごめんなさい」
来栖さんは私よりも遥か年下の女の子に見えるのに、とてもしっかりとしたところは見習いたい。
「何も起きていないのに、謝る必要はないですよ」
「
「ちょっ、和奏! その言い方は酷くない!?」
「本当のこと」
お二人は兄妹ではないのに、初さんが来栖さんの明るいところすべてを持っていってしまったのではないかと思うほど。初さんの賑やかさに、悠真様は何度も救われているのだと思う。
「結葵様がいてくれるおかげで、少しは休みが取れやすくなる」
「うん、本当に感謝してます」
それなのに、私はほかの狩り人のみなさんに挨拶できない。でも、それは仲間外れにされているという話ではなく、悠真様なりの気遣いなのかもしれない。
(私が、少しずつ世界に馴染んでいけるように……)
華族の婚約者になるための教育をほとんど受けることができなかった私でも、蝶の実験は多くの危険を持ったものだと勘づいてしまう。
「
「わ~か~な~? 少しは敬ってほしいんだけど! こっちは、不眠不休で蝶の脅威を退いてるんだから!」
そして私は、
共通に介するものがなければ、私たちは出会うことがなかった。
妹が
「
「なっ! 棒読み! 結葵様、この狩り人に、何か言ってやってください!」
「あ、えっと……今日からよろしくお願いします?」
お堅い自分も、真面目な自分も、それなりに認めてくれる人はいると思う。
けれど、私たちは仲間でもあるから、会話を流すという高等な意思疎通も覚えていかないといけないと思った。
「結葵様、顔を上げて。私たちは対等。仲間」
「ま、和奏の言う通りかなー。結葵様は悠真くんの婚約者でもあるけど、狩り人の仲間に加わってくれたわけだから」
深々と下げた頭を、ゆっくりと上げる。
そこには、お二人が柔らかな笑みを浮かべながら私のことを受け入れてくれた。
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