第32話 妖魔再来

梨花の妊娠から数ヶ月が経ち、村の安寧が訪れる中、義貞と梨花は日常を楽しむことができていた。しかし、ある夜、子どもが生まれる前触れとなる不思議な出来事が村を襲う。


その夜、義貞が狩りに出かけた際、山の中で奇妙な声を耳にする。「助けてくれ、助けてくれ…」と囁くその声に引き寄せられ、彼は暗い木立の中へと足を踏み入れた。


そこには、地蔵の頭に入れられた首が転がっていた。その首は流れるような言葉で義貞に語りかける。「私は地蔵首。生前は人々を守るために尽くしていたが、今は誰にも知られず、助けを求めている。」


義貞は驚きつつも、その悲しみに心を痛めた。「どうすれば助けられるのか?」


地蔵首は笑いながら答えた。「私を再びこの世に戻すためには、あなたの心の中にある純粋な思いが必要。私が力を貸そう。だが、注意が必要だ。小鬼が邪魔をしに来るかもしれない。」


その言葉を聞いた義貞は、村に戻ろうと決意する。しかし、その途上で小鬼に遭遇することに。小鬼はいたずら好きで、悪戯を楽しむ存在だった。「おい、武士! お前の大切な人が危ないぞ!」彼は笑いながら告げる。


義貞は小鬼の挑発に応じず、「私の家族を脅かすことはできない。」と決然と言った。それを見て、小鬼も興味を持ち始め、「それなら、私と勝負だ。もしお前が勝ったら、地蔵首を助けてやろう。」


**見越し入道の来訪**


その後、義貞は地蔵首のことを思い出し、見越し入道に助けを求めることを決心する。見越し入道は、古くからの伝説に名を持ち、智慧と力を兼ね備えた存在であった。義貞は彼のことを思い、彼が暮らすと言われる古い神社に向かう。


神社に到着すると、見越し入道は深い声で義貞を迎える。「お前が来るのを待っていた。地蔵首を助けたいのだろう?小鬼と戦うのは勇気がいるが、知恵も必要だ。」


義貞は見越し入道にお願いし、自身の心の強さを証明するための方法を教わる。見越し入道は、義貞の愛と強い意志が小鬼に打ち勝つかどうかを占うため、彼に試練を与える。一連の試練を乗り越えた義貞は、自信と共に小鬼との対決に挑む準備を整えた。


**決戦の時:**


その後、義貞は小鬼との対決に挑む。一歩一歩踏みしめる心を落ち着かせ、戦いへ向かう。小鬼は高らかに笑い、挑発してくるが、義貞は心の奥底で温かいものを感じていた。それこそが、梨花と子どもへの深い愛だった。


テレビのように小鬼との勝負は続き、義貞は見越し入道から授かった知恵を使い、小鬼に立ち向かった。「お前のいたずらなど、私の愛には敵わない!」


その言葉が小鬼の心に響いたのか、彼は一瞬ためらってしまう。義貞の強さと愛情が小鬼に影響を与え、最終的には小鬼も助け舟を出すように考えを変えていく。小鬼は、自らも孤独だったことを思い出し、義貞に協力することを決意した。


**物語の締めくくり:**


義貞は地蔵首を助けることに成功し、村に喜びが広がる。地蔵首は感謝の意を示し、自らの力を使って村人たちを守ることを決意する。小鬼も新たな友を得て、義貞の仲間となる。


見越し入道は、「真の強さとは、愛によってもたらされるものだ」と語りかけ、義貞に温かい言葉をかける。その言葉を心に刻んだ義貞は、今後の人生で何があっても家族を守り、愛を深めていくことを誓った。


梨花は無事に子どもを産み、村には愛と絆が深まっていく。義貞の周囲には地蔵首、小鬼、そして見越し入道が共にいて、新たな時代が始まることを感じさせた。


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