第19話 嵐の前の静けさ

正中の変から数年が経過した頃、後醍醐天皇は静かな侘びの中で、打倒幕府への思いを募らせていた。彼の心には歴代の天皇たちが築いてきた日本の中央集権の理念が根強く宿っており、その実現のためには何としても幕府の圧制を打破しなければならないと考えていた。


天皇は、自らの信任できる者たちを召集し、密かに再起の計画を練ることにした。彼の側近である日野資朝や他の公家たちも、天皇の決意に共鳴し、彼らは「南朝」の興隆を目指す一団となった。彼らは、御家人や地元の豪族、さらには悪党たちにも呼びかけ、協力を仰ぐことを決めた。


一方、幕府も後醍醐天皇の動きに敏感だった。特に、南北朝の争いが起こる前の混沌とした時代には、北条得宗家の勢力が絶対的であった。北条氏の家臣たちは、朝廷の動向に目を光らせ、天皇の行動に懸念を抱いていた。彼らは、天皇が再び反乱を起こすのではないかと危惧し、その動きを封じ込めるために策を講じることを決めた。


しかし、天皇の信頼を受けた者たちは、敢然と立ち上がり、地域の豪族たちを一つにまとめ上げていった。各地で密かに集会が行われ、幕府の圧制に対抗するための軍を編成し始めた。天皇は自らの命令で、戦をするための準備を進めながら、全国の支持者たちから情報を集めていた。


文保2年の初め、各地で反幕府の動きが活発化し始めた。その中で、後醍醐天皇はついに、畿内における反乱の起点となるべく、あらゆる資源を結集させて、夥しい数の兵士を引き連れて出陣した。彼は自ら先頭に立ち、かつての栄光を取り戻すための戦に挑むこととなった。


各地では、幕府に対する抵抗の旗印となった「正義の士」たちが立ち上がり、彼らのもとに続々と仲間が加わっていった。それに対し、幕府側もまた、厳重な姿勢で反乱の抑え込みに全力を尽くすこととなった。戦いの火蓋は切って落とされ、両者は互いに接触し、いざこざが生じていく。


この流れの中でどのように歴史が進んでいくのか。正中の変から始まったこの動乱は、後醍醐天皇を中心とする南朝の支持を受けた者たちと、幕府との激しい対立へと発展し、日本の未来を大きく変える運命を抱えて進んでいくのだった。戦の渦中で、主人公たち、後醍醐天皇の志を受け継ぐ者たちの物語が幕を開ける。

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