第8話 第2部勾当内侍の誓い - 第1話: 出逢いの舞台
平安京の春、桜が舞い散る美しい季節。人々は花見に興じ、賑やかな声が響き渡っていた。勾当内侍、梨花は、いつも通り宮中の仕事に追われていた。彼女は誇り高く、内侍としての役割を全うすることに喜びを感じていたが、心の奥には何か物足りなさを抱えていた。
ある日、梨花は宮を出て、周辺の桜並木を散策することにした。普段の忙しさから解放され、自然の美しさを感じる瞬間こそが彼女の心を癒す特別な時間だった。その時、彼女の目に入ったのは、一人の見知らぬ若者だった。彼は桜の木の下で静かに詩を読み上げていた。
その声は、まるで美しい音楽のように耳に心地よく響き、梨花は思わず足を止めた。彼の名は新田義貞。若者はただの旅人ではなく、志し高い武士だった。彼は、こうした平和な春の日々の裏に潜む闇を憂い、民を救うために立ち上がろうとしていた。
詩を読み終えた義貞は、梨花の存在に気付き、微笑みかけた。彼の目は青く澄み渡り、心の底からの熱意を感じさせるものだった。梨花は思わず言葉を失った。彼の視線に引き込まれるように、心の中にある憧れが少しずつ大きくなっていくのを感じた。
「あなたは、何を思ってその詩を口にしていたのですか?」梨花が思い切って問いかけると、義貞は温かい笑顔を見せた。「私は、この国の未来を考えていた。民が笑顔で暮らせる日を夢見ているのです」と答えた。
その言葉は梨花の心に深く響いた。彼女はこれまで、自らの仕事はただの義務だと思っていたが、義貞の言葉から、より大きな目的があることに気づいた。彼を支え、共に歩むことができれば、何か意味のあることが成し遂げられるかもしれないと。
二人は、その日から少しずつお互いのことを知り合い、情熱をもって未来を語り合うようになった。梨花は、彼の志に感化され、自らも何か大きなことに挑戦したいと思うようになった。彼との出逢いが、彼女の人生に新たな火をともしたのだった。
こうして、平安京の桜の下で運命的な出逢いを果たした梨花と義貞。彼女の心に宿った新たな誓いは、彼の力強い志とともに、次第に大きな波となって、彼女の未来を大きく変えることになる。
次第に二人は、戦や暴政に立ち向かう決意を固めていくが、その一歩を踏み出すには、まだ多くの試練が待ち受けていた。
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