1章 7話『アンデルセン』
タクミは闇の中、心の中の静けさを感じながら進んでいた。足元には数多の敵が倒れている。自らの手で戦った結果、彼の内面には少しずつ自信が芽生えていた。剣を振るうたびに、仲間たちの声が頭の中に響く。「行け、タクミ!」その声が彼を奮い立たせるのだ。
その瞬間、彼の目の前に巨大な影が現れた。ラズールが再び立ち上がり、全身を覆う闇のオーラが彼を包んでいる。タクミは一瞬息を呑んだ。敵の魔力は一層強くなっている。だが、タクミは恐れを振り払った。彼には仲間がいる。彼らを信じて、立ち向かう覚悟を決めた。
「ラズール、俺たちはここで終わらせる!」
タクミの声が闇を切り裂く。その言葉は、仲間たちに力を与えた。アリスが前に出て、彼の横に並ぶ。彼女の手には炎の剣が握られていた。カナタも後ろから続き、弓矢を構える。タクミは仲間たちと目を合わせ、意気を感じた。
「行くぞ!」
タクミは前へと進み、剣を振りかざす。ラズールもまた、闇の魔法を放とうとする。闘志が燃え上がる中、タクミは彼の攻撃をかわしつつ、一気に近づいた。彼の剣がラズールの防御を貫く瞬間を狙った。
「アァアアアア!」
ラズールの叫び声が響き渡る。彼の体が一瞬、揺らいだ。その隙を逃さず、アリスが前方から炎の剣を突き出す。彼女の剣がラズールの腕に命中し、彼は苦悶の表情を浮かべた。
「今だ、カナタ!」
タクミが叫ぶと、カナタはすぐに矢を放った。その矢は、ラズールの弱点である心臓へと一直線に向かう。だが、ラズールは驚異的な速さで身をかわし、その矢をかろうじて回避した。
「この程度で、我が力を止めることなどできぬ!」
ラズールの声が冷たい風のように響き渡る。彼はさらに魔法を強化し、周囲の空気が震え始めた。タクミはそれを見逃さなかった。すぐに仲間たちに叫んだ。
「分散しろ!魔法が来る!」
彼の警告が仲間たちを動かし、四方へ散らばる。ラズールは怒りを露わにし、魔法を一気に放出した。そのエネルギーは空を焦がすような光を発し、周囲の風景を変えていく。タクミはその光に目を細めながら、仲間たちを確認した。アリスは左側、カナタは右側、全員がそれぞれの位置で構えを取っている。
「今度こそ、決めるぞ!」
タクミは心を決め、ラズールに向かって突進した。彼の心臓は高鳴り、全身が熱くなった。タクミの周囲で魔法の光が飛び交う中、彼は自らの力を信じて、一撃を放った。
その瞬間、彼は何かを感じた。周囲の魔法の流れが彼の中で一つになり、強い力が湧き上がる。タクミはその力を全力で剣に集中させ、ラズールの体を貫こうとする。
「これが、運命を変える一撃だ!」
タクミの叫びが響く。彼の剣がラズールの心臓を直撃し、黒いオーラが爆発するように散った。ラズールは悲鳴を上げ、後ろに倒れ込んだ。その瞬間、彼の体から闇の魔法が消えていく。
「やった……!」
仲間たちが歓声を上げる。しかし、タクミはすぐにその場から離れるように指示した。
「急げ!まだ油断はできない!」
ラズールの体が崩れ始め、周囲の空間が変わり始めている。タクミは仲間たちを引き連れて、一斉にその場から脱出した。
彼らは遺跡の外に出ると、目の前に広がる光景に驚愕した。闇の城が崩れ、光に包まれていた。タクミは仲間たちと視線を交わし、安堵の表情を浮かべた。
「これで……終わったのか?」
アリスが不安そうに言う。タクミは頷いた。
「多分、これでラズールの力は消えたと思う。でも、まだ安心はできない。まだこの世界には魔物がたくさんいる。俺たちは続けないといけないんだ。」
カナタは剣を背中に担ぎ、少し考え込むような表情を浮かべていた。
「そうだな……俺たちの目的は、ただラズールを倒すだけじゃない。もっと大きな力が潜んでいるかもしれない。」
タクミはその言葉に頷いた。仲間たちと共に進む彼の心には、次の戦いへの決意が燃えていた。
「それでも、俺たちが守るべき人たちのために、前に進もう。」
彼は仲間たちを振り返り、強い眼差しで言った。仲間たちもその言葉に頷き、タクミの後を追った。彼らの冒険は、まだまだ終わりではない。新たな目的を持って、タクミたちは再び旅を始めるのだった。
やがて、彼らは新たな街へと辿り着いた。街の人々は彼らを温かく迎え入れ、感謝の言葉をかけてくれた。タクミはその反応に少し驚いた。彼は、仲間たちと共にこの街の人々を守るため、何かを成し遂げたという実感を得ていた。
「俺たちも、何か役に立てたのかな。」
アリスが笑顔で言った。タクミはその言葉に心が温かくなった。彼は仲間たちを見回し、彼らとの絆の深さを感じていた。
「俺たちは仲間だから、どんな困難も乗り越えられる。これからも、一緒に戦おう。」
タクミは力強く言った。仲間たちは彼に続いて、共に進む決意を新たにした。
新しい冒険が始まろうとしていた。彼らの心には、運命を変える力が宿っている。タクミはその力を信じ、仲間たちと共に未来へと歩み出すのだった。
スターリン
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