第5話:一癖も二癖もある人たち。
そんな訳で、俺の部屋に俺を守るためって死神の吉子が住みついた。
さて、吉子もそうだけど・・・。
できれば関わりたくないんだけど、たぶんいつかは吉子のことがこいつらに
バレるのも時間の問題。
できたら、俺と吉子をそっとしといて欲しいんだけど、そんな奇跡は起こら
ないだろうな。
ってこと一癖も二癖もある極楽荘の住人に触れておかなきゃいけないかな。
吉子がもし誰かに見つかったら口止めしなきゃいけないからね。
まずは俺の隣の女、名前を「
女でとても色っぽい・・・いやエロい。
職業は夜の商売、キャバクラ。
極楽荘の住人からは普段は「
多分、源氏名なんだろう。
たいがいは夜中に酔っ払って帰って来る。
言い忘れるとこだったけど、蜜柑さんはAV女優さんのバイトもしてるらしい。
一度だけ見たことあるけど、映像の中の蜜柑さんは別人だった。
顔立ちからして違う・・・それはもうたまらないくらいセクシーでいい女、
やってるシーンなんか観なくても蜜柑さんの顔を見てるだけで発射して
しまった。
そしてその
なんと私立探偵なんだそうだ。
めっちゃ怪しいし・・・。
身だしなみをきちんと整えて極楽荘の前に止めてある時代物のベスパに乗って
朝方からどこへともなく出かけていく。
あとピン芸人は芸名を「路面電車」と言ってテレビですら見たことがない。
丸坊主にしている以外よく分からない。
そして俺の向かいの部屋の浪人生の男子「
部屋からほとんど出て来ないので死んでるんじゃないかと、ちょくちょく
管理人さんが見にくる。
ただ週末、土曜日だけはどこかに出かけて行くらしい。
その隣の部屋は音楽事務所が借りてるらしくて・・・そこは今、売り出し中の
アイドルの子が住んでいる。
名前を「
で・・・一番端っこの部屋。
この部屋、夜中になると女の話し声や泣き声が聞こえる。
住人みんな聞いていて、気になっていた。
きっとなにかいる・・・たとえば外国ふうに言うとゴーストとか?
触らぬ神になんとか・・・。
だけど吉子は死神、その部屋になにか感じてるみたいだ。
なんせ吉子は見るからに好奇心旺盛そうな子だから何にでも首を突っ込み
そうだ。
そして吉子がやって来た次の日の朝。
「おはよう〜、井戸川っち!!」
「朝だよ〜」
「お〜き〜て〜・・・起きろ〜スケベ〜エロ男〜」
「あ〜もう誰がスケベだよ・・・朝から賑やかだな・・・うるさいよ」
「やめてくれないか?」
「ここって壁が薄いんだから、大きな声出すと隣の
静かに起こせよ」
「蜜柑さんって?」
「隣の部屋に住んでる、おネエちゃん」
「ふ〜ん・・・」
「って言うか井戸川っち、お部屋のお片付けしてたらこんなの見つけちゃった。
「え〜なに?・・・なにを見つけたって?」
「こんなの・・・」
って吉子が親指と人差し指でつまんでるものを俺は見た。
「あ〜・・・ダメダメダメ・・・なに勝手に見つけ出してるんだよ」
それはDVD、いわゆるAV「アダルトビデオ」ってやつ。
ひとりで住んでるから、誰かに見られる心配がないと思って適当に本と一緒に
立てかけてあったんだ。
「《トックにハメ太郎》ってなに?」
「こっちの《いいタメ、ハメ気分》ってなに? 」
「いいから・・・それはいいから」
「分かってるよ・・・これエッチいのだよね」
「そうだけど・・・なに?俺だって男だし、観ちゃいけないのか?」
「不潔・・・汚らわしい・・・キモ〜・・・最低・・・」
「なんで死神にそんなこと言われなきゃいけないんだよ、朝からさ・・・」
「嫌い!!・・・私の理想の井戸川っちはそんな不潔な人じゃない」
「待て待て、そっちが勝手に僕を調べて勝手に好きになって勝手に来た
んだろ?・・・なのにそのくらいでなんだよ」
「この世にスケベじゃない男なんているわけないだろ?」
「そんなこと言ってたら彼氏なんかできないぞ?」
「彼氏なんかできなくてもいいもん・・・私には井戸川っちがいるし・・・」
「今、俺のこと嫌いって言ったじないか?・・・矛盾してるだろ?」
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます