第10話 これだから男なんて
武佐々美術大学の教室の中。たけしはわたる先生の授業を受けている。皆、絵を描いてる中、わたる先生はたけしの横に立ち、たけしの絵を見る。たいしは不愉快な顔でたけしを睨み始める。そんなたいしの視線を感じるたけしはできるだけ気にせずにわたる先生と絵を描いた。
そして時間が経つ。
「はい、そこまで……皆、描いた絵を見せてくれ」
生徒たちが描いた絵を講評棚に置いて、みんなが描いた絵を見る。たけしは最後に絵を端っこに置いて、みんなが描いた絵と比較する。
「みんな、すごいな……それぞれ絵の構成や特徴が出てる……」
「うん! みんな、それぞれ性格が出ていいと思う! だが……やこくん、狙って形を変えたのはいいけど狙い過ぎて形を失っている。れんちゃん、全部同じトーンがあさい。一番明るいところと、一番暗いところをもっと意識するように……それからみぐちくん……」
たけしは新ためて先生に感心する。皆の絵を見てたけしはたいしの絵に引き込まれる。
「この絵は誰が描いたんだろ? なんかこの絵に視線がいく……」
「そしてたいしくん。よく描けてる。奥行き感も出てるし、視線誘導もできてる。たいしの強い個性が見えていい」
「ありがとうございます!」
「最後はたけしくんかな? どれどれ? うん、これだけ自分の世界を表すとはさすがだね。さすが健太郎先輩の弟子だな!」
たいし、ますます健太郎のことが気になる。
「(健太郎先輩? 誰だ?)」
嬉しくなり、照れるたけし。
「あ、ありがとうございます」
「この調子で頑張って!」
チャイムの音がなる。
「では授業はここまで! 解散!」
みんな、わたる先生に挨拶をする。
「ありがとうございました!」
りなは部屋で勉強をするが、小腹がへり、台所であんこのお菓子を探す。だが、あんこのお菓子はなく、りなは健太郎を呼ぶ。
「お父さん? あんこ菓子食べた?」
返事がない健太郎。
「ねぇ〜?」
りな、健太郎の作業室へ入り、健太郎を探す。
「お父さん?」
部屋にはたけしの絵以外に何もなく、誰もいなかった。りなはたけしの絵を見てたけしの進路を思い出し複雑な気持ちになる。りなは買い物をしに商店街へ行く。
駅で電車を待つたいしはスマホで“健太郎”を検索していた。
「ちくしょー。誰た? 健太郎は……」
たいしは商店街に入り、家に向かった。りなはあんこ菓子を買い店長がりなに声をかけた。
「おう? 今日はりなちゃんが買いに来たの? 健太郎さんはどうした?」
「さぁ……わかりません」
たいしは“健太郎“の単語を聞いて、りなを問い詰める。
「ちょっと君! 健太郎さんとどういう関係だ! 娘なのか? ちょっと聞きたいことがあるんだけど……!」
りなはグイグイくるたいしのせいであとずさりして壁にぶつかる。たいしはりなに壁ドンする。
「どうなんだ……!?」
りな、いきなりすぎて目が大きくなり、少し怯える。
「(ゴクリ……!)」
だが、小さいたいしの身長のせいで子供を見る目に変わるりな。
店長がみどリの頭をたたく。
「こら! りなちゃん。困ってるじゃない!」
「いってー! 何すんだよ! 親父!」
「親父!?」
店長、りなにあんこのお菓子を渡す。
「ほら、りな、持っていき。健太郎さんによろしくな」
「ありがとうございます」
りな、店長が渡したあんこお菓子を持って、走って家に帰る。
「ほら、みどリ、店の手伝いをしな」
みどリ、親父の言葉を聞かずにりなを追いかける。
「おい! どこに行くんだ!?」
りな、走って家に帰る。
「はぁ、はぁ……(後ろに振り向く)いないか……」
りなの前に立つみどリ。
「おい」
「きゃー!」
「お前、健太郎さんの娘なのか?」
「だったらなんですか?」
「俺を健太郎さんと会わせてくれないか?」
「なんで私が貴方の頼みをきく必要が? お断りします」
りな、去るがりなの後ろを追いかけるみどリ。
「ついてこないでください!」
「こうでもしないと会わせてくれないでしょう?」
みどリ、りなの後ろをついて佐藤家に行く。
りなとたいしはエレベーターに乗り、りなは玄関の前に立つ。
「どうしてでも父に会いたいですか?」
「娘だったのか」
「早く用を済ませてくださいね」
りな、たいしを家の中に入れる。
「お邪魔します」
りな、たいしを早く帰らせるため健太郎を呼ぶ。
「お父さん? お客さんが来たよ! どこにいるの?」
だが、健太郎はまだ家に帰ってなかった。
「健太郎さん。描いた絵見せてくれない?」
「描いてませんが……」
「え? なんで?」
「色々ありまして……」
健太郎、両手に買い物の袋を持ち、家の中に入る。
「ただ今、買い物してたら遅くなっちゃった」
たいし、健太郎の前に立つ。
「貴方が健太郎さんですか?」
「えっと……君は?」
「初めまして、佐倉たいしと申します。内田わたる先生の弟子です」
「あんこお菓子店の店長の息子だよ」
「その呼び方はやめて!」
「俺はあんこのお菓子店とは関係ない!」
「あ……わたるくんの弟子か? 俺に何のようかな?」
「佐藤先生をプロの画家と見込んで頼みがあります。僕に絵を教えてください」
「君に絵を教える? 君はわたるくんの生徒だろ? わざわざ僕に教えてもらえなくとも、絵は描けるだろ」
「僕は負けずき嫌い性格なんです。今日、武佐々美術大学でたけしの絵を見ました。正直驚きました……あれは私にはないやつです」
たいし、武佐々美術大学でのたけしの絵を思い出す。たいしはたけしの絵を見て、驚き拳に力を入れて悔しがる。
「なぜ、そこまで美術にこだわるんだ?」
「みんなは昔から僕の絵を褒めてくれます。プロでもやっていけると褒められています。でも父には僕の絵をわかってもらえなくて……バイトしてお金貯めて……推薦で武佐々美術大学へ入学しました」
「そうなんだ」
「僕が絵にこだわるのはもうすぐコンクールがあるからです。そこで優勝しないと父に認めてくれないんです。そうでもしないと……僕は……」
「わかった。君を僕の弟子にしてやる」
「お父さん!?」
「あ、ありがとうございます!」
「ダメに決まってるでしょう? たけしにもタダで絵を教えているのにあんこのお菓子の息子までタダで教えるき?」
「佐倉たいしです」
「佐倉さんまで教えるのは反対。すみませんがうちは厳しい家庭なんです。お引き取りください」
「りな、僕は頑張る子にはできるだけ手伝いをしたい」
「それならお金をもらって」
「わかりました。お金出します」
「大丈夫なのか?」
「はい、なんとか用意していきます」
「それとお父さん。たけしにも授業料もらって」
「なんでたけしまで?」
「うちは貧乏な家庭なの。授業料としてもらえるのは当然でしょう?」
りな、携帯でたけしに電話をする。
「もしもし、たけし? 話がある」
家に着いたたけしは部屋に入る。
「何?」
「今までの授業料もらうことにしたから。明日、お金持ってきて」
「なんでいきなり?」
「あんたの美術の授業料だよ」
「わかった。で? いくら」
「授業一回に5千円」
「わかった。明日、渡すよ」
「今まで取れなかった授業料ももらうから明日5万円持ってきて」
「5万円?! ちょっと待って。いきなりそんな大金は無理だよ」
「とにかく明日まで5万円持ってきて」
りな、電話を切る。
健太郎、りなの態度に疑問を持つ。
「りな……ちょっと冷たくない?」
「うるさい。私は今日機嫌が悪いの」
りな、部屋に篭り、勉強をし始めた。
いきなり大金を用意する必要があるたけしは携帯で「お母さん」と「お父さん」に電話をしようとするが、辞める。たけしは外に出る。
翌日。りなは放課後、満員電車に乗り家に向かう。りなは人が良すぎる父と勝手なたいしを思い出し不機嫌な気持ちになる。
お父さんは人が良すぎ。ただで教えるなんてどうかしてる。佐倉さんもいきなり何? 「僕に絵を教えてください」? こっちはたけしに教えるのにせいいっぱいなのに……たけしもそう! なんで美術を? 東大へ行くんじゃなかったの!? あぁ……なんか男を相手をするのが嫌になってきたかも。
りなの後ろからおじさんがりなのお尻を触り出し、りなは怒りに燃え始める。
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