エニフェズ初のまうっこ誕生!
「かしこまりました。では、今からあなた様の事は、ツルガマウ様とお呼びいたします。それで、早速ではございますがツルガマウ様。ツルガマウ様がケンティスにご慈悲を下さったことは──」
「あ、あの!」
「な、何でございましょうか?」
「フルネームで呼ぶの、やめませんか?」
長いし、なんだか落ち着かない……。
「……ふるねーむ、とは、なんでしょうか?」
「は?」
そ、そこからなの? お姫様が、マジで知らないって顔してるよ……もしかして、この世界の人たちの名前って、地球とは違うの? 姓名で別れてないのかな? ……まあ異世界だし、それもあり得るか。
あたしは確認する為に、まずはお姫様の名前を聞いてみることにした。
「え、えーと……すいませんが、お姫様のお名前をお伺いしても──」
「ああっ!? もも、申し訳ございませんでしたあっ! わたくしとしたことが、御使い様のご降臨に興奮したあげく、臣下の無礼に激怒しすぎて、わたくしが一番の無礼者に成り下がっておりましたあっ!? かくなる上は、この腹かっさばいて──」
「せせ、切腹!? やめましょうよ、そんな事!」
神様さあ……ここは中世ヨーロッパ的なの? 日本の江戸時代なの?
「しかし、それではわたくしの気が──」
「あたしがいいっていてるんだけどなあ……」
まったくひかなそうな勢いだったので、ちょっと悪いと思ったけど、あたしが偉い人って体で行ってみることにした。
「くっ……わかりました。今回はツルガマウ様のご温情に甘えさせていただくことといたします。ですが、次に何かあった時には、このメイニー、見事あなた様の御前で──」
「だからいいですって、そういうの……」
あ、メイニーさんていうのね。
そう思いながら、なおも食い下がってきそうな彼女の言葉を遮った。
「それでメイニーさん。あなたの正式な名前って、何て言うんですか?」
「はい。わたくしはサグワーン王国第二王女、メイニー・サグワーンと申します」
「……」
地球と変わらないじゃん! フルネームって言葉がなかっただけなのかな……。
「あ、本当は、もっとごちゃごちゃとわたくしの地位とか何とかを説明する言葉が入るのですが……長ったらしくてめんどくさいし、何よりそんなに憶えられないので……城での公務の時以外は、これで通しております!」
あ、めんどくさいって言っちゃたよ? ……メイニーさんの事が、大体だけどわかった気がする。
「そうですか……」
「はいっ!」
よくとおる快活な声に苦笑いを提示しつつ、話をもとに戻すことにした。
「メイニーさん、さっきの話の続きなんですけど、あたしの事は、まうとかまうまうって呼んで下さい」
「ええっ!? 御名を崩してお呼びするなんて、恐れ多くて──」
「いいんです。そっちの方が、親しみがわくでしょう?」
「で、ですが……」
「あたしがそう呼んで欲しいんです」
「……」
メイニーさんが眉間にしわを寄せ、考え込んだ。
「わ、わかりました……では、恐縮ではございますが……まうまう様とお呼びさせていただきます……」
「うん、それでお願いします!」
こっちの世界での初めてのまうまう呼びだよ! って事は、メイニーさんがまうっこ1号ってことで、いいよね?
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