第18話

「セロさんの傷口を縫い、輸血などの処置もしましたが……ほんの少しの延命にしか、なりません。あなたにも…処置をしました。まだ頬も腫れていますね…。」


「私は…私のことはいいの。セロ…セロを…助けて……。命だけは…助けて……。」


女性医師にしがみ付いて哀願する。


「無理です。これ以上のことはできません。医者として、これ以上やれることがありません。」


女性医師は目を閉じ、首を振る。


「そんな…そんな……助けて…助けて!セロを助けて!」


「ごめんなさい。」


「うぅぅぅ~~……セロ……セロ……。」


セロの傍で泣き崩れていると、誰かが私の頭を撫でた。


私が顔を上げると、


「マニュ……。」


と、セロの声がした。


慌ててセロを見ると、少し目が開いていた。


「セロ!」


セロの手を両手で握り締める。


「ありがとう…先生。マニュと…最期の別れが出来るよ。」


セロの弱々しい声。


「後で様子を見に来ます。」


女性医師は会釈すると、部屋から出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る