第13話
小説を書くという行為は何だろうか。
作家であれば、しばしば自問自答する質問だった。
私はこの問いにこう答えたかった。
「何の意味も持たせる必要はない。ただ書くだけだ。」
執筆とは、思考を紙やモニター上に移し替える単純な作業に過ぎない。
その行為自体に大層な意味を込めることはできなかったし、私はそれを最も警戒していた。創作活動において肩に力を入れたり、完璧を求めようとすると、小説を書くことができなくなるからだ。
そんな作家を数多く見てきた私は、常に力を抜くことを心がけていた。
できる限りリラックスした状態で、ただ「文章」を書くこと。それが私の目標だった。小説というのは、完全に完成された時に初めて意味が与えられるものだからだ。
とはいえ、作家がこの「創作の罠」に陥るのは避けられないことでもあった。
私自身も時々、小説を書くという行為が崇高なものだと思い込むことがあったからだ。
そのうちの一つは、私の短い見識を小説で完全に表現した瞬間だった。それを完成させた時、私は本当に計り知れない満足感を味わった。
そしてもう一つは、最高の道具で最高の雰囲気の中で文章を書く時だ。
ちょうど今のように。
カタカタ、カタタタタッ。
「クゥー。」
今、私はいわゆる「陶酔状態」にあった。
夜遅く、机の前に吊るされた白熱電球が輝いている。
窓の外は闇に包まれていた。
机の周りには幼少期から集めた様々なグッズが所狭しと並んでいた。『スター・ウォーズ』のポスターから始まり、『D&D』のルールブック、ガンズ&ソードの雑誌、好きだったアニメのボブルヘッド人形、AC/DCのレコードまで。
その中には父から贈られた物も多かった。
その中心で、ハードボイルド・ナイン・サウザンドタイプライターを使って、『Mother』の第2部のプロットを組み立てているなんて。
「麻薬中毒者の気持ちがわかるな。」
実際の現実でやってしまえば手錠をかけられそうな考えをしながら、私はひたすら執筆を続けていた。
連載開始から2週間、『Mother』は順調に進んでいた。
サイモンの電話によれば、現在私の小説は驚くほど強い反響を得ているとのことだった。
ファンレターだけでなく、新聞社に直接電話をかけてくるファンまでいて、連載の問い合わせではない電話はご遠慮くださいという文言を入れる必要があるほどだったそうだ。
「期待通りになったな。」
微笑んだ私は、一瞬プロットを練る手を止め、思索にふけった。
サイモンは『Mother』の成功を大いに称賛していたが、私は内心、安心もしていなければ特に喜びも感じていなかった。
その成功の最大の要因が、現在のレーガン大統領の当選によって「異例の」増加を見せているトランス・ニュー・メディアの売上部数にあることをよく理解していたからだ。
11月6日の朝、「WIN」というタイトルに興味を引かれて初めて買った新聞。
そこに載っていた新作小説の第1話。
読者が多いのは当然のことだった。
「もちろん、すべてがトランス・ニュー・メディアのおかげだとは思わないが。」
小説の成功には、私の実力も確かに一役買っていたことだろう。
だが、私はジャンル小説業界がいかに過酷な場所かをよく知っている。
ジョージ・ギッシングの長編小説『ニュー・グラブ・ストリート』には、こんな一節がある。
『今の時代に文学活動は商売だ。
並外れた才能を持つ一部の天才作家を除けば、この時代に執筆で成功する人々は、商売上手な者たちだ。
彼らはまず何よりも市場を念頭に置いている。
ある商品が売れなくなり始めると、すぐに新しく魅力的な商品を提供する準備ができている。
収入を引き出すためのあらゆる手段を熟知しているのだ。』
それが今の私に非常に共感できる言葉だと感じた。
かつては教師という職業を持ち、ある程度家の事情が落ち着いた状態で執筆していたが、今はそうではなかった。
我が家は様々な債務に苦しみ、私はそこから抜け出したかったのだ。
「そのためには、何でも利用しなければならない。」
小説だけでなく、業界全体を。
この80年代には、ビジネス自体の成熟度も非常に低く、規格もなく、流行は次々と変わっていった。
そのため、無数の作家が現れては消えていった。
ある意味、規格に合わせて工業製品を製造する私たちは、多様な方法で進化し、生き残る必要があった。
その中で最も簡単な方法が、自分自身と市場を分析し、それに合わせて執筆することだった。
私が知る編集者の一人はこう言った。
「ジャンル小説を書くことは、綱渡りのようなものだ。」
その小説を読む読者のニーズを満たしつつ、自分の色を出すこと。
ニーズにだけ合わせてしまうと、ありふれた小説の一つとして思われて売れず、逆に自分の色だけを主張してしまうと、誰もその小説を面白いと思って読まない。
それでは、自分の色とは何だろうか。
結局、自分の色を知るためには、世界を経験し、たくさんの小説を読んで書くしかなかった。
だからこそ生まれた言葉が「インプット、アウトプット、フィードバック」だった。
あの下ネタを言うのが上手い編集者は「入れて、抜いて、怒られる」と表現していたが、それを聞いたとき、本当に契約を破棄したくなったものだ。
「入れて、抜いて、怒られる。」
いやいや、インプット、アウトプット、フィードバック。
私は、自分が持つ未来の考えを基に、この1980年代を体験しながらインプットを生成した。
そして、それによって『Mother』を創造した。これがアウトプットだった。
「さて、次はフィードバックだ。」
この作品が人々にどのように受け取られているか。
それを通じて、自分自身の色を検証し、綱渡りをする時が来たのだ。
少し緊張する気持ちだった。
「ふう。」
今日の執筆目標を達成し、軽く深呼吸をした後、私はサイモンから届いたファンレターをカバンから取り出した。
編集者の意見はもちろん、読者の考えも作家にとっては非常に重要だった。もちろん、ファンレターを送ってくれる人たちは、間違いなく私のファンなので、良いことしか書かれていないだろうが、1980年代の人々が『Mother』のどの部分に惹かれてファンになったのかを知るべきだと思った。
私は最初の手紙を取り出した。
普通の白い封筒。
コロラドに住むA・ベイカーさんからだ。
[こんにちは、作家さん。私は『Mother』をとても興味深く読んでいる読者です。なぜなら、この小説は私の人生と全く一致するからです。早朝から母は私に牛の乳を搾れと命じます。その重労働が終わると、私が嫌いなブロッコリーが山盛りの朝食を用意してくれます。スージーを見るたびに、まるで自分を見ているようで胸が痛みます。なので、もしよろしければ、私を助手として使っていただけないでしょうか?私は見た目によらず、16歳で仕事もでき、言うこともよく聞く、とても良い子です。作家さんさえ良ければ……。]
私はにっこり笑った。
「初っ端から『サイコビッチ』が出てきたな。」
サイコビッチ。
こういうケースがまったくないわけではなかったと聞いている。
今では勢いが少し収まっているとはいえ、田舎町ではまだ残っているヒッピー文化やグルーピー文化と結びついて、作品に自我を投影し、作家そのものに没頭する小さなファンたち。
ある作家は、実際にこういう少女を家に連れ込んで、連邦刑務所に収監されたと聞いた。
「もちろんそんなつもりはないけどな。」
後半部分は適当に無視しながら、私はこの少女がどのように小説に「没入」しているのかを推測した。
そのようにして、いくつかの手紙を読み、読者が私の小説のどの部分に熱狂しているのかをチェックした。
「すべてが正しい意見とは限らないが。」
それでも、共通点を見つければ、何かしらの答えにたどり着けると思った。
毎日、我が家に届いて積み重なったファンレターは約20通。
筆跡や手書きの内容から、年齢や性別を推測した。
[作家さん!小説、めっちゃ面白いです!Han-jaって何ですか?!]
[東洋文化圏では実際にあんな形の強制があると聞いたことがあります。とても怖かったです。]
[児童虐待と言っても過言ではないほどひどかったです。スージーが幸せになってほしいです。]
[描写が生々しくて怖かったです。それなのに、私にはよくわからない東洋文化圏の様子が鮮明に浮かんだ点が不思議でした。]
[展開が衝撃的です。]
[スージーをあまりいじめないでください。]
[スージーがかわいそうです。]
ポイントを抜き出して、ペンで整理した。
そして、じっくりと考えた。
東洋的な恐怖。児童虐待。衝撃的な展開。スージーへの同情心。没入感。
彼らはなぜこんな感想を抱いたのか。
「もちろん、私がそれを意図してこの作品を書いたからだ。」
私は『Mother』を企画し執筆する際、主に2つの要素に集中した。
1つは、「母親」に代表される未知の恐怖だった。スージーの一挙手一投足を監視し、制御し、歪んだ信仰に取り憑かれ、時には神聖冒涜とされる行動も躊躇なく行う母親と周囲の宗教家たち。
もう1つは、その社会に属し、次第に崩壊していくごく普通の「スージー」だった。
この2つの要素を対立的に描くことで、私は読者が感じる恐怖を最大化し、同時にこの作品の結末をより衝撃的に感じさせるための仕掛けとした。
1980年に戻ってきて以来、私がずっと深く考えていたことが1つあった。
「自分の色とこの時代のニーズが融合したとき、どんな結果が出るのか。」
前世で出会った編集者たちは、私の小説を堅実で重厚、そして生の感触に近いと評価していた。ファンタジーよりも現実、それも冷たい現実を忠実に描き、読者にメッセージを伝える作家だと言われた。私もその評価に同意していた。少なくとも夢や希望に満ちた物語を書くことはなかったからだ。
「むしろ、絶望の中から生まれる希望を描く作家に近いだろう。」
つまり、私は「絶望」を表現することに長けているという意味だ。
だからこそ、デビュー作にホラー小説を選んだのだ。ホラーは基本的に陰鬱な感情を背景に進行するジャンルで、その中で私の色を強く表現しても、読者が大きな抵抗を感じることはないと考えた。
そして、実際に出た反応を整理し、1つの結論に達した。
「第2部ではスージーをさらに追い詰めてもよさそうだ。」
もっと読者を苦しめるような文章を書きたくなった。
***
フアンが夜間警備をしているガラス工場の社長、フェリックス・フィッシャーはドイツ系だった。
つまり、冗談を知らないようにプログラムされているということだ。
それだけでなく、彼は常に硬い表情で、目の周りが過剰に発達した外見のため、近づきにくい人物だとよく言われていた。さらに、彼は仕事に没頭する性格だった。
そのため、彼はほぼ数十年近く、工場に最も早く出勤していた。
今日も同じだった。
早朝、古びた車に乗って工場に到着したフェリックスは、白髪交じりの髪をかきむしりながら工場全体を見渡した。昨夜何もなかったか、問題が発生していないか。彼はいつも自分の目で確認しないと気が済まなかった。
最後に警備室を見に行った。
彼の部下はまだ寝ていた。
「フアン。」
「……。」
「フアン!」
「ふわっ?!」
フアンは驚いて飛び起きた。
「今日も寝てるのか?」
「す、すみません。社長、申し訳ありません。」
「そんなに眠いなら、いっそ解雇して家で寝ればどうだ?」
「社長、解雇されたら家がなくなりますよ。路上で寝るしかありません。」
「ふむ。」
不機嫌そうに警備室に入ったフェリックスは、隅に積まれていた紙の束を見つけ、ひょいと手に取った。それは新聞だった。
「これは何だ?」
「あ、それは。」
「こんなものをここに置いておいて、火事にでもなったらどうするつもりだ?」
「そんなことにはなりませんよ。私はタバコも吸わないし。」
「塹壕で死んだ私の仲間も、炎を避けて塹壕の外に出て蜂の巣にされるまでは、そう言っていたな。」
「暗すぎる話ですよ。」
フアンの愛嬌のある笑いにため息をついたフェリックスは、自分で新聞を処理しようと思い、それを持って外に出た。そして、焼却場に新聞を入れようとした時、偶然にもフアンが折りたたんだページを開き、首をかしげた。
「Mother……?」
「社長、うちの母の悪口は言わないでくださいよ。」
「なんだ? いつの間に来たんだ?」
「ああ、小説の話をしてたんですね。あれ、本当に面白いです。その新聞、返してください。」
「ふむ。」
過度に発達した眼窩上隆起とは裏腹に、性格はそこまで厳しくなかったフェリックスは、焼却場に向けていた手を止めてフアンの方を見た。
「フアン、この新聞がそんなに欲しいのか?」
「はい、社長。」
「じゃあ、勤務中に居眠りしないことだ。1週間真面目に働けば返してやる。」
「ひどいですよ、社長。」
「いっそ路上で寝かせてやろうか?」
フェリックスの脅しに耐えきれず、ため息をついたフアンは、肩を落として背を向けた。
「まったく、チッ。」
再び舌打ちをしたフェリックスは、フアンがきれいに畳んでおいた新聞を確認した。
トランス・ニュー・メディア。
普段、新聞をプロパガンダの塊だと思い込んでいて絶対に読まなかったフェリックスだったが、小説が本当に面白いと真剣に話すフアンの様子に、ふと好奇心が湧いた。
さらに、妻のマーサが言っていた言葉が頭をよぎった。
「あなた、新聞や本をもっと読みなさいよ。そうすれば、認知症になりにくいんだって。」
最近、年を取って記憶が曖昧になってきたと感じていた矢先に聞いた言葉だ。
「ふむ。」
いや、まずは仕事だ。
フェリックスはフアンがまとめていた新聞をそっと脇に抱え、事務所へ向かった。
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