沈む栄華
強力な不意打ちに、私は一瞬意識を失ってしまう。
しかし直ぐに意識を取り戻したものの、身体を打つ不気味な音が止まらない。避けるのは間に合わない、身に覚えのある衝撃波に備え、私は全身に力を込め、ヨクトマシンを纏った。
「グハアッ!!?」
「■■ッ……■■~……」
備えたお陰か意識がある。しかし、衝撃波が身体を撃ち抜いた所為か、私は震える事しか出来ないでいた。
何とか回復を図ろうとする私だが、奴に鼻先を殴り飛ばされた所為か、完全に意識を奪われてしまった。
「■■■■……」
微睡みの中、何が私の内耳に届いてきた。
「■■■■……!」
それは奴の呟きだ。しかし、何を言っているのか理解出来ない。
「■■■■ッ……!」
帰ったら翻訳機でも探してみるか。そのほうが便利だろう。
「《《■■■■》……!」
「──本登録が完了しました。これからもよろしくお願いいたします、マスター!」
──ああ、私の端末……それはダメだ……それだけは許されない……許さない……ッ!!
周囲のヨクトマシンをあるだけ集め、全身に行き渡らせる。戦場でのみ許されたヨクトマシンのオーバードーズ。それをもって、嘗て戦場で畏れられた【赤雷】としての姿を再現する。
全身を淡い赤光が包み込み、軈て身体を赤雷が走ると、その身体を深紅へ染め上げてゆく。
「──ああ、最初からこうしておけばッ……!!」
「……■■■■ー……」
「──害意を感知しました」
異変を察知した奴と端末──いや、私に仇する害虫共が離れ、何かを呟いている。端末は惜しくもあるが、また新しいのを買えば良い。今は──
「粉微塵にしてブッ殺してやるッ!!!!」
顎を大きく開き、限界を超えた更に先を行く、後先を考えない一撃をチャージする。
(消え去れ、忌まわしき記憶と共にッ!!!!)
「■■■■!」
奴は端末を庇い、私の攻撃を馬鹿正直に受け止めるつもりの様だ。数少ないヨクトマシンを集め、その腕を盾として構えている。そんな程度では一瞬も持たぬと言うのに。
「──マスターへの害意、及び脅威的エネルギーを感知。防衛アプリ起動。【龍の咆哮】を発射します。離れてください」
「■■■■■ッ!?」
その時だった。端末が何やら奴に向けて語りだしたのだ。途切れ途切れに聞こえる端末の音声に、驚愕する奴の様子を見るに、何かしらの防衛機能が発動したのであろう。しかし、この一撃はたかだか端末の防衛機能では防げやしない。
ヨクトマシンを集め、無垢なる白の輝きを放つ端末。ああ、やはり美しい。私にはデザインのセンスがあるようだ。
しかし、その美しい端末を害虫が付いた事で台無しになってしまった。端末の後ろから奴が身体を重ね、手を合わせる。すると、無垢な白の輝きに奴の青が混じり、美しい蒼白の光となったではないか。
悔しくも、私はその光に見惚れ、暫し怒りを忘れてしまった。それに恥と怒りを覚えた私は、全てを無かったことにすべく光線を放つ。
「ッ消え去れーーーーッ!!!!」
「──発射します」
「■■■■■ッ!!!」
深紅と蒼白の光線がぶつかり合う。その衝撃は深海まで轟き、真っ二つに割った。深紅と蒼白の輝きが海全体を明るく照らす。
「──エネルギー残量六〇パーセント」
端末が漏らした言葉を聞き、私はほくそ笑んだ。このまま行けば害虫共を葬り去れる。失う物は多いが、何とでもなるだろう。
しかし、それも上手く行きはしなかった。周囲に青い星々が瞬き初めると、それらは流星となって近付いてきたのだ。それがなにかと確認すれば、青い星はヨクトマシンを身に纏った魚だった。
(チッ、生成生物共がッ!)
軈て魚達は奴に向かって集い始めた。そこで私はある事を理解した。奴こそが全ての元凶であると。
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