死闘

「■■■■■ッ!!」

「私に──触れるなッ!!」


 青い光を纏った害虫を──奴を……りゅうじを、私は腕を薙ぎ払い弾き飛ばした。


「■■ッ!?」


 たったそれだけで、りゅうじは……奴は海底まで沈み、砂埃を上げて叩き付けられていた。……やりすぎたのかと腕を見るが、特に力を入れた訳では無いと分かる。……つまり、奴はこの程度だったと言う事だ。少しでも奴に恐怖し、敬意を感じた事が恥ずかしくなってきた。


「──りゅうじ! ッ警告! 保護対象へ危害を加えています。直ちに行動を停止し、出頭して下さい!」

「喧しいッ!!」


 喉袋の中で騒ぐ端末を黙らせ、私は海底に叩きつけられた奴を見る。その姿は満身創痍であり、目を開けるのもやっとと言う様子だった。

 奴は震える手を私に──いや、私の喉袋に居る端末へと伸ばし、何か呟いている。だが届かない、手も声も。


「流石にもう死ぬだろう」

「──りゅうじ……」


 一度の復活を確認したものの、流石に二度目は無いだろう。神にでも手助けされなければ、奴はこのまま息絶える。今は端末の本登録か、再設定が優先だ。


 そうして奴を放置して先へと進んだ私だったが、その考えが間違いだと直ぐに示されてしまった。


「■■■■■■■■ーーー!!!」

「何ッ……!? ──化け物めーーーー!!!」


 奴はより強い光を身に纏い、私に襲い掛かってきたのだ。暫し驚愕に身が固まったが、直ぐ様反撃に動く。奴に向けて咆哮を放ち、ヨクトマシンを身に纏い本格手に迎撃を開始したのだ。


「■■■■■■ッ!!!」

「喧しいッ!!」


 何やら私に向かって奴が吠えている。しかし、粗雑かつ波の少ない音に、言葉らしき音はノイズとなって届いた。


「クソッこうなるなら鍛錬を怠らなければよかったッ!」


 奴に向けて赤光線レッド・ブレスを放ち、更に鰭を薙ぎ払い赤光刃レッド・ブレードを飛ばす。駄目押しに赤光弾レッド・バレットを放てば、奴もお仕舞いだろう。

 しかし奴は、全ての攻撃を青い光を纏った身体を縦横無尽に動かし、まるで踊るように全てを避けきったではないか。


「ええい、海龍の故郷の生き物は化け物なのかッ!?」


 至近距離まで近付いてきた奴を、鰭から発生させた赤光刃を薙ぎ払い接近を許さない。


「──りゅうじ……」

「■■■ッ……!」

「ふむ、来るか……!」


 端末の言葉が届いたのか、奴が覚悟を決めた様子で身体に力を入れている。輝きを強めるヨクトマシンを見れば、次の一手が手に取るように分かる。本来なら幼少期に訓練を受け敵に悟られない用にするのだが、致し方あるまい。大方無理な突撃を決行し、私に取り付いて端末を奪おうとしているのだろう。ならば、私は


「■■■■ッ!!」

「甘いッ!!」


 案の定、奴は隙を突くべく突撃して来た。訓練時代に新兵が必ず味わう。相手の状況を読み違え、技に嵌まってしまったのだ。僅かな懐かしさを胸に、私は隙だらけの奴を尾鰭による海流で巻き上げると、必殺の一撃を放つ。口を大きく開け、喉に殺意の紅い光を集め──放った。


「手向けに喰らわせてやる。紅光線クリムゾン・レーザ!!」


「■■ッ──■■■ッ!?」


 奴は咄嗟にヨクトマシンを腕に集め、光線を防いだ。だが、それも長くは持たなかった。紅光線は奴の腕をジリジリと焼き、遂に海底へと撃ち落としたのだ。


「……ふーむ、しぶといな」


 海底に沈んだ奴を見れば、まだ息があるのか私を睨み付けている。……こうなっては仕方が無い。業腹だが、完全に奴を消し去るにはこうまでするしかないようだ。


 私は口を大きく開け、今できる最大までエネルギーを貯めて攻撃の準備に入った。


「さよならだ、害虫」


 深紅の光線が今、放たれ──

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