第九回 忘れ得ぬ想い出へ。(千恵の視点)


 ――白い布で覆われた長い机。その上には重なる色紙と貴重なオブジェが飾られてる。



 いつの日か、オタサンがレビューした玩具。千恵ちえも、梨緒りおの視線もそちらへ集中するそんな中で、クスッとオタサンが笑って、


「君たち姉妹かい? 本当に仲がいいんだね」との一言を頂戴し、


「はい、とっても仲良しなんです。妹もオタサンのファンでして、こちらと、こちらにもサインをお願いしたくて」と、梨緒は白いハンケチと、白い色紙も差し出し、サラサラとオタサンはサインしながら「君たちの名前、教えてくれないかな?」

「梨緒」「千恵」と、順に名乗った。


 するとハンケチには『梨緒ちゃんへ』と。色紙には『千恵ちゃんへ』と。それから長い机に重ねられてる色紙を一枚取り出し、そこには梨緒と千恵の二人の名前が入って、いつまでも仲良しでいて下さい。――とのコメントを入れてくれた。


「はい、これからも面白いレビュー頑張るから、楽しみにしててね」


 と、オタサンは笑顔の中で、梨緒と千恵にサイン入りの、その色紙を手渡した。



 ――そしてスタンプラリーは続く。


 地下二階の会場を後にして足並み揃えて歩いてゆく。……けど、


「次、何処なんだろう?」と、梨緒は言う。チケットで場所を確認しながら。問題はそこからなの。押すスタンプは全部で三つ。三か所に分かれてるというのか、三か所も会場があるってこと? いずれにしても、このドバシカメラの建物の中にある。


 お外の気温は最高潮。


 猛暑日も続いてるというのか、途切れることはなく。建物の中を散策する方が安全なのだ。今、専用の用紙に押されてる文字は『機』……あと二文字。そのうちの一つは五階にある。プラモデルや玩具が販売されてるコーナーだ。それを見るのも楽しみで、可愛らしい鉄道模型の車両もあるから、それも走らせてみたくなったの。



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