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違和感に気がついたのは、魔法の訓練が始まって一時間程度経過した時だった。オレ以外の生徒たちはバテて肩で呼吸していた。
教官は適当にオレに魔力の総量が多いのかもと言っていたが、そんなもんじゃない。全く疲労を感じることはなかったのだ。
しかし、それがないにしても一つの変化は存在する。半透明だったオレの右腕に色が戻りつつあったのだ。ここから考えられるのは二つだ。まずは水玉を割ってから一定時間で効果が切れること。次に水玉に総量が存在し、それを超えると解除されること。
検証のために右手からできる限りの水を生み出す。大体自分の身長分を直径とした水球を吐き出したところで、オレの腕は元の色を取り戻した。それと同時に、浮いている水は不安定になりつつあった。
制御から完全に離れているわけではないが、時間が経つにつれ、いずれ絶対に形を崩壊させるだろう。
適当に人形にぶち込んで、他の生徒と同じように地べたに座り込んだ。
そして彼らが回復した時を見計らって、オレも同じように訓練についた。
◇
「対人訓練の時間少なくなってオレ結構嬉しいわ」
「そうか? 俺はもっとしたい気もするがな」
「ほ、ほんと? 私はもういいかな…。めっちゃ疲れるし」
能力の訓練に少しずつ慣れてきた日々。練習後の夕食の時間に俺たち三人は談笑しながら、食事をとっていた。
「堂島はいいじゃん、フィジカル強いんだしさ。でもオレらお前より運動できねぇし」
「そんなことないだろ。沖野は訓練中結構教官相手に善戦してたろ」
「んやー、結局一回も攻撃当てられんかったからね」
「沖野くん明らかに成長してると思う。体格良い組がきついことしてる印象あるけど、普通の体格でそこまでできてるのすごいよ」
「そうしないと叩かれるからね。結局は痛みが一番効果的なのかも…」
最初こそはこんなところ逃げ出して、城外に行こうとも考えはしたが、案外ここのトレーニングは侮れないことがわかった。
「ねえねえ、話変わるけどさ。最近光くんたちのチーム疲れてそうじゃないかな? あんまり訓練場見ないし」
そう言った三木の目は今食堂に来た『称号持ち』とか言われていた、クラスのリーダー光正義たちを見ていた。
「すげー喜ばれてたしなぁ。国王たちからしたら一番望んでた能力持ちなんだろうねー。なんか別の訓練してるって聞いたけど」
どこかで生徒が話しているのをいつかそう聞いていたのだ。
「別の? やっぱすごい強いんだろうなぁ…。でもすごいきつそう最近」
「いずれオレらもああなるかもね」
「えー、やめてよそういうの!」
「ごめーん。ま、食べ終わったしもう部屋に戻ろっか」
「おうよ」
赤い絨毯の上を沿っていつもの四人部屋に向かう。道の途中でオレたちを見つめる兵士に軽く挨拶をしながら、寝室へ到着した。
「毎回思うけど、よく見られるよね」
この世界に来てからずっと思っていたことをふと口にした。
「そういや他のやつも同じこと言ってたぞ」
「やっぱそう思うよな? 監視されてるみたいで居心地悪いね」
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