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わたしとさくらの生まれたところは田舎の町で人も少なくて、とても静かなところだった。自然は豊かだったけど、観光地になるようなところではなかったので、本当になにもなにもすることがないような町だった。だから綺麗なさくらはきっと高校生か大学生になったときに、(あるいは就職するにしても)絶対に東京にいくんだろうなと思っていた。でもさくらに聞いてみるとさくらは今のところ、このなにもない田舎の町から出ていくつもりなないといった。そのことを聞いてわたしはとてもびっくりした。(もったいないと思った。さくらならきっといろんなことができるはずなのに。大きな夢だってきっと叶えられるはずなのにと思った)
「ここはいいところだよ。別に無理して東京にいこうとは思わないな。人が多いところは苦手だしね」とにっこりと笑ってさくらは言った。そのさくらの顔は嘘をいっていないさくらの顔だった。(友達のわたしにはそれがわかるのだ)
「いいところじゃないよ。遊ぶ場所はないし、おいしいものを食べられるお店もないし、ほしいものだって、全然売ってないよ。いいところじゃない。わたしは絶対にこの町を出たいと思うよ」とわたしは言った。するとさくらは「そうかな。いいところだと思うけどな」とわたしを見て言った。
わたしとさくらの日常はとても穏やかで平凡なものだった。なにも事件も起きないし、大きな出来事のようなこともなにもなかったし、昨日と同じ今日を繰り返しているような毎日だった。中学校の一年の行事をこなしながら、勉強をして、おしゃべりをするだけの毎日だった。わたしが「とってもたいくつだね」というとさくらは「そんなことないよ。毎日楽しいじゃん」と笑いながらわたしに言った。
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