第1話 勇者が生まれなくなった日

「おい!どういうことだ!」


きらびやかな王室。部屋が広いにもかかわらず、声が隅々にまで行き渡る。


「そうは言っても陛下…」


白い細長いヒゲをぶら下げた臣下が眉間に皺をよせながら、杖を震わせながら王を宥

める。


「落ち着いていられるか!」


それもそのはず。王国歴史1000年を境に、


勇者が生まれてこなくなったのだ。


そもそも勇者とは。

勇気あるものでも、血筋が良いものでもない。

手に紋章があらわれるのだ。

それは先天性ものであり、成長するにつれ現れるというわけではない。

どこに生まれるかは誰にも分からない。

ただいつ生まれたかは誰にでも分かるのだ。

虫も鳥も魚も獣も、人も。


「嗚呼、勇者が生まれた。」

そう実感するのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る